もののけの話
大昔、曾爺さんが猟師をしてた時に体験したという話。
年上の猟師、若い猟師、曾爺さんの3人で山に入った。
しかし獲物が全く捕れないまま迷ってしまい、しかも若い猟師が足を怪我してしまった。
仕方なく野宿をする事にした。
たき火とか猟師メシとかそんな物は無く、ただ横になって朝を待つだけだったらしい。
空腹に眠れず、ゴソゴソと寝返りを打ってると、落ち葉が風に舞うような、しゃらしゃらと音がする。でも風など吹いていない。
奇妙に思い、耳を澄ませていると、その音は近づいてくるようだ。
真っ暗闇の中、年上の猟師を手探りで探し、起こそうと揺すってみると、彼も目を覚ましており、
「音の事だろ、ワシもさっきから聞こえてる。今は詳しい事は言えない。ただな、いいか、絶対に目を開けるなよ」
音はどんどん近づいて来る。
曾爺さんは怖くて怖くて、歯を食いしばりながら恐怖に耐えてた。
ふと音が止まった。
その何かは去ってしまったのかと、片目だけ薄く開けてみた、すると…
闇の中に、さらに濃い雲のような闇の塊があり、それには対ではない巨大な人間の目が何十個も付いていて、一つ一つがキョロキョロと眼球を動かしていた。
そして一瞬の後、全ての目が曾爺さんを見た。虚ろな視線で。
曾爺さんは悲鳴を上げる事なく気を失い、その「闇の目」を見た片目の視力も失ったらしい。
年上の猟師曰く、「人が居てはいけない夜の山を巡回し続けるもののけ」らしい
山にまつわる怖い話53