再び今は亡き婆ちゃんの話
茶畑で刈り取りをして、茶葉袋を担いで山を降りる時の事。
急な土砂降りで、父(曾爺)と欅の巨木で雨宿りをしていたら、逆に山を登って来る人達がいた。
父(曾爺)「登って来る人らを見てもかまへんけど、話をしたらあかんで」
登って来る人は五人くらいで、雨避けか手拭いを被って顔は見えない。
ただ最後尾の小男だけは里芋の葉を傘にしていたから、顔が見えた、筈だった。
婆ちゃん「ええ男かなと思うて見たんやけど、目も鼻も口も何も無かったんや」
のっぺら坊、だったらしい。
曾爺さん曰く、のっぺら坊は顔が無くなったのではなく、人間に似せた姿になったモノノケが、顔だけ再現できなかった姿らしい。
雨宿りしている父子をやり過ごそうと人の姿に化けたモノノケの、ポロリな瞬間だったという話でした。
山にまつわる怖い話55