不思議な話

オカ板で不思議な話を読んでいて、俺も一つ書きたくなったけど何も体験したことがないから、ネタが欲しくて周囲に「なんか怖い話ない?」と聞いて回ったら、みんな「無い」って言ってたんだけど、父親だけがミョーな顔をして間をとって俺の顔を見てから、話してくれた。

「父さんの父さん、Aだ。お前のお爺さんだな、から聞いた話だ。
Aが父親のBと沼に釣りに行ったとき、あまりにも魚が釣れないんで場持たせにBが不思議な話をねだって教えてもらったんだ。。
Bのお父さんCが、そのお父さんDと二人で沼に釣りをしていたとき、通りがかりの身に知らぬ人がDに「あれ、ひょっとして、Eさんのお子さんではありませんか?」と話しかけてきたんだそうだ。

Dは(お父さんの知り合いか)と話に応じたんだが、
「昔Eさんに頼まれた、お父さんFさんの絵が出てきましてね、あんまり顔がそっくりだからひょっとして、と話しかけてみたんですよ。ちかぢかお届けします。お住まいは…」
Dが「ええ」とか「はあ」としか言わないうちに、その人は電話番号だの住所を番地までスラスラ言うので(本当に父の知り合いなのか)とすっかり安心したんだそうだ。

そのFの絵を描いたのがFの父親のGで、どうもGは夢で自分の息子Eがあんまりかわいい笑顔だったからと、父親の画家Hに絵の描き方を教えてもらって、一生懸命描いたそうだ。
そのHももともとは画家になるつもりなんか全くなかったのに、父親のIが…」

「ちょっとちょっと、うちの家系が長々と続くけど、いつになったら不思議な話が始まるのよ」

「それがな、この話はこんな感じでずっ~と続くんだよ」

「なにそれ」

「まぁ聞きなさい。お父さんがなんでこの話をしたかというと、お父さんのお父さん、Aからこの話を聞く前に、大昔にお爺さんBから直接聞いたことがあったんだよ。Bから聞いたときは冗談話だと思って途中で遮ったんだけど、ずいぶん時間が経ってAから話を聞いたときに不安になってな、遮りも茶化しもせず、真剣に話を聞いていたら、Bから聞いたところまでは少し言い回しが違っていたけど、基本的に全く同じ話だったんだよ。そのことをAに言ったら「そうだろう」って言われて家系図を引っ張り出されて、直系家長を全て諳んじてみせたんだよ」

「…(あきれた)」

「馬鹿馬鹿しいと思うだろ?だけどな、考えてみろ、父さんや俺の父親は爺さんからこの話を聞かされて、爺さんもまた父親から聞かされたみたいで、それが嘘だとも思えない、その爺さんの父親もまた父親から聞かされたんだろう、それがずっと続いているんだぞ?うちの家系ではこの話自体が途切れることがないんだ。俺もお前が不思議な話をねだらなかったら敢えて話そうとは思ってなかったけど、お前もまた自分の子供や孫を持って、子供や孫から不思議な話をねだられたら、この話をすることになるんだぞ?一体どんな不思議なことが起こったのか誰も知らないのに、お前もまたこの話を語ることになったら、とても不思議なことだとは思わないか?」

「う~ん、結婚できるかどうかはともかくとして、話すのかなぁ」

「父さんも疑っていた。しかし今サワリだけだけど話した。お前がこれ以上聞かなかったり、子供に話さなかったら、父さんが直接お前の子供に話すことになるんだろうな。だったらこう聞くよ。お前は自分がその話の中に入りたくはないか?」

俺は返事が出来なくて、とりあえず黙った。
まだ子供が出来る予定もないし、結婚する当てもない。
考えて考えて、中途半端な形でだけど、やっぱり「不思議な話」の中に入りたいのでオカ板に書くことにした。

不可解な体験、謎な話~enigma~ 65

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