笛の音

私が大学生の頃の体験談です。
話自体は10年位前の話になります。

ある日の夕方、大学のサークル部室で麻雀をやろうという話になりました。
面子もちょうど4人で度々一緒に麻雀してるメンバーです。

ただその日は、いつもと同じ内容じゃつまらないので

①半荘毎に清算
②その半荘ビリだった奴が、次の半荘のレートを倍に引き上げる権利を持つ
③レート引き上げは、してもしなくても良いが引き下げは出来ない
④一旦引き上げたレートは、引き上げない限り次の半荘もそのまま
⑤途中抜け禁止。翌日朝までやる。支払も必ずきちんとする』

という内容で勝負する事になりました。

麻雀のルールを分からない方に簡単に説明すると、負け込んだ人間が賭け金をドンドン上げる事が出来るルールで、その晩の結果から言えば1番負け込んだ奴は、70万くらい負けました。
たださすがに全員貧乏学生でしたので、最終的には70万負けた奴が吉野家で全員に朝飯を奢ってチャラにする話で終わりました。
しかし、それはあくまで朝方勝負が終わってから出た話であり、勝負中はお互い真剣に『払うし、払わせる』と思いながらやっていました。

麻雀をしていたサークル部室は、大学の規則により夜0時以降は利用禁止でした。
時間になるとブレーカを落とされてしまい電気が使えません。
ただ部屋の出入りは出来るし、見回りとかもないので、皆普段から気にせず0時過ぎても、部室で寝たり、懐中電灯で飲み会をしたりしていました。

その晩も0時にブレーカが落ちました。そこで部屋の明かりが消えた後は、『麻雀卓の四ツ隅にロウソクを立て、その明かりだけ』で勝負を続行しました。
さて最初の方は冗談やら雑談をしながら遊んでいたメンバーも、前述の通り、大学生にしては異常に高いレートで勝負も白熱し、負け込んだ人間がピリピリしはじめ、皆無言で打っていた真夜中2時頃の事です。

ふと気づくと『笛』を吹いている様な音が聴こえてきたのです。
最初は気のせいだと思って無視してましたが、確かに聴こえてましたし、段々音自体大きくなってきます。しかも聴いた事のない曲でしたが、メロディがありきちんと音楽になっていました。

その笛の音は美しく神秘的で、なんというか和楽器の木の横笛を童子が月明かりの下で演奏している。そんな情景が頭に浮かぶような音でした。
祭囃子の様な明るいテンポの曲ではなく、能や雅楽の様なイメージです。

そこで私は、無言のまま黙々と麻雀をしてる他のメンバーに聞いてみようと思い

『あのさぁ…』と口を開いたところ、被せるように

友人『なにもいうな』
私『いやでも…』

友人『だから~なにもいうなって』

私『聴こえるよね?』
友人『あ~あ。言っちゃったぁ。いわなきゃ俺の気のせいだと思ったのに…。やっぱみんな聴こえるんだ』

という会話をしつつ他のメンバーも『聴こえている』という事を確認しました。

私は、外にでて確認して来ようと提案しましたが、他のメンバーが『いやこの雰囲気はヤバイ。ドアも開けない方がよい』という話になりました。

そこで一旦麻雀は休憩にして、この現象をあれこれ話ているうちに、音は聴こえなくなりました。
音に気づいてからこの間30分くらいの話です。
その後は、麻雀を再開して、予定通り朝まで遊び前述の様な結果になりました。

ちなみに、確かに外に出ないようにはしましたが、その音が聴こえいる間、特に『怖い』とは感じませんでした。
あくまで不思議で神秘的な体験でした。他のメンバーもそう感じたと話しています。

補足:大学は、東京千代田区、オフィス街のど真ん中。夜中は人気は全くないところ。他のサークルが規則を破ってまで部室に残って夜中2時に30分間笛を演奏する確率は皆無。

不可解な体験、謎な話~enigma~ 69

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