不思議な体験を2回経験した。
1回目は小5の時で、2回目はその12年後ぐらい・・・つい昨日。
俺は小5の時まで、年末年始と夏休みの時期になると遠くはなれた母方の祖父母の家に4~5日間、家族で泊まりに行っていたんだ。
祖父母の家は俺の家族が住んでいた場所よりも都会だった。
閑静な住宅街、といった言葉がよく似合う場所で両親と田舎に住んでる俺にとっては憧れの場所だった。
小5の夏休みに両親と泊まりに行った時、夕方頃にこれまた遠くに住んでる母の弟に当たる叔父も祖父母の家に泊まりにやってきて賑やかな夕食だった。
夕食後も俺は叔父の話す体験談が楽しくて少し寝るのが遅くなってしまった。
午前2時少し前ぐらいに、ふと目が覚めてトイレに行きたくなってそのまま暗さに目が慣れてたから灯りを付けずにトイレで用を足して、トイレから出ると、目の前に人の様なモノが立ってた。
辺りの暗さよりも更に黒い、あの名探偵コ○ンに出てくる犯人みたいな全身黒タイツでも着ている様なのがトイレの真正面、何故か向かい側の壁に掛けてあるでっかい鏡の前に立ってた。
用を足している間、何の音もしなかったから「え?」みたいな表情のまま立ち止まってしまったんだけども、そこからが一瞬だった。
滑るように近づいてきたと思ったら両手を後ろ手にがっちり決められて、そのままトイレの正面にあるでっかい鏡にぶつかる様な勢いで押し付けられた。
ひぃー!と掠れた声で叫んだけれど、鏡に顔面押し付けられて思ったように声が出ないし、両手も後ろに回されて全く動かせないし、殺される!って思って全力でジタバタしてると、「どうした!?」って居間の方から叔父の声が聞こえて、トイレがある辺りの灯りがついた途端、体が自由になった。
涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら、起こった事を説明したんだけれども結局、「寝ぼけてたんだろ」で片付けられてしまった。
それから、「祖父母の家には絶対にもう行かない!」と言い続けて12年後、祖母が長期入院してる間に、祖父が軽い認知症になってしまったらしく、祖父がデイサービスという場所に行ってる間に、母と共にゴミだらけになってしまっていた祖父母の家の大掃除をする為、物凄い久しぶりに祖父母の家に入った。
俺はあの恐怖体験の後、当時住んでた家の近くの古武術の道場に5年以上通い自信をつけた・・・のだが、トラウマになってしまって通うのを止めた後も、祖父母の家には中々足が進まなかった。
しばらく掃除を続けた後、1日泊まる予定で来たけれども夕食の材料が無い、と、俺に掃除を任せて母が近くのスーパーへ買物にでた。
掃除自体はもう大方終わったようなものだったから、適当にテレビ見たりして時間を潰していたんだけれども、昔怖い思いをした家に一人きりという状況に正直ビクビクしていた。20代前半のがたいの良い男が(笑)
で、当然ながらずっとトイレに行かない、というわけにもいかず午後2時頃、我慢できずにトイレに駆け込んだ。
トイレから出てもすぐ正面にでっかい鏡が掛かっているだけで何もない。「まあ、まだ昼過ぎだしなー」と思いながら鏡の前まで行って、この鏡に何か住んでたのか?とか思いながら鏡を触っていたら
「ガラッ」
と、後ろのスライド式のトイレのドアの音がした。
ビクッとなって振り返ると、目の前に人の様なモノが立ってた。
黒い、昼間なのに真っ黒。人の影をそのまま立体化したような、それに何だか輪郭がぼやけてる。ただ、昔見た奴よりもあきらかに小さく子供サイズだった。
体格で明らかにこちらが勝っていたからか、見た瞬間は怖かったがすぐに例えようの無い怒りが込み上げてきて、「今なら勝てる」と飛ぶように相手の後ろに回りこんで両手を固めた後、「あの時のお返しだ!」と、鏡に押し付けた。
その黒いのも少し遅れてバタバタと抵抗したけれども、まったく抜け出せない様子だった。
もしかしたら鏡に押し込めば消えるんじゃないかと思ったのだがそんな事もなく、1分ぐらいずっとそいつを鏡に押し付けてたんだが、急に暗闇で懐中電灯を向けられた時みたいな目の前が光で真っ白になってすぐにそいつが消えた。
両手を抜け出せないようにがっちり固めてたはずなのに。
抜けて逃げ出したというより、消滅したようにしか思えない消え方だった。
しばらく腰の引けた臨戦態勢(笑)で警戒してたけれども、結局何も起こらず。
ただ、母に話してもきっと馬鹿にされると思い、結局誰にも話さないまま夕食を食べ、寝る時間になった。
少し興奮してはいたけれども、ずっと緊張しっぱなしだったからか、夜中起きることも無くぐっすり朝まで寝てた。
自分の家に帰ってきて昨日起こった事を文章にしてまとめて見ようと思ったのだが、ここまで書いて見て、最初から読んでみて、改めて怖くなってきた。
あの子供サイズの影人間ってもしかして、小5の頃の俺だったのでは・・・
そして、小5の時に会った奴は昨日の俺だったのかも・・・?
ちなみにその日、起こった事は話さなかったが帰ってきた祖父に夕食後、それとなくトイレ前の鏡について聞いてみたら、お人好しな祖父が40年ぐらい前、知り合いから20万ぐらいのぼったくり価格で買わされた物らしい。
無駄にでっかいから置き場所に困り、結局トイレの前の壁に掛ける事にしてそのままだという。
結局よくわからないままなのだけど、不思議な体験だった。
不可解な体験、謎な話~enigma~ 69