首くくりの木

俺の地元に首くくりの木と呼ばれている楠がある。
何もない坂の上にポツンとあって、やたらでかい。樹齢数百年はあると思う。

何で首くくりの木と呼ばれているかというと、その名の通り、やたらとその木で首を吊る人が多いから。
数人とかじゃない。じいちゃんに聞いたところ、分かってるだけで十人以上がその木で首を吊ってるらしい。
楠のある坂は中学の頃通学路になってたんだけど、気持悪いから遅くなる時は必ず友達と一緒に通ることにしてた。

ある日の夕方、太陽が山陰に隠れだして周囲が薄暗くなり初めた頃、友達と楠の前を通った。
暗いといってもまだ自転車のライトを点けるほどでもなく、それほど怖いとは感じなかった。
グダグダ話をしながら惰性で坂を下っていたところ、友達が何気なく後ろを振り返って叫んだ。

俺も自転車を止めて後ろを見てみると、楠に何かがぶら下がっているのが見えた。
沈みかけた太陽が正面にあり、逆光で影のようにしか見えなかったが、人間のようだった。
それも1人や2人ではない。枝いっぱいに鈴なりにぶら下がっていた。
20人以上はいたと思う。

友達と一緒に必死で自転車を漕いで帰ったのはいうまでもない。

ほんのりと怖い話48

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