地元はとある田舎なんだけど、地元には気心知れた友人が何人かいて休みになると地元に帰っては朝まで飲んだり、ナンパしたりコンパしたり 楽しい時間を過ごしていた。
そんな夏休み。
いつものように友達と夜遊んでて引っ掛けた女とカラオケやって盛り上がってたんだけど女達はカラオケが終わると次の日バイトがあるとかで帰ってしまった。
って話になって山の上にある廃墟と化した別荘に行こうと言う話になった。
でも当時は免許も取り立てだったし何をやるにも楽しかったんだ。
その別荘は今は取り壊されてしまったけど、地元じゃかなり有名な所らしく誰それが其処で殺されただとか、夜中窓から女が覗いてるだとか何か色んな噂が流れてくる場所だった。
カラオケで大分時間を過ごしていたので其処に到着したのはもう深夜零時を回ってた。
着いてびっくり。なんでこんな山奥に別荘があんの?って感じで周りには何も無いし。
まあでも、俺はからっきしだけど友達の中に格闘技とかやってる奴とかいて性格もイケイケだったんで、かなり大人数じゃない限り襲われても平気かな。
みたいな感じもあったかな。
幸い珍走も来ず、しばらく廃屋の中で探検や何かを物色したり 壊したりと色々やって遊んでたんだけど、しばらくすると飽きてしまい俺達は車に戻った。
んで車に戻る際、たまたま運転手がドアを閉め、そん時に肘がドアロックに当たって 全ドアにカギが掛かったんだよね。
俺は助手席だったんでそれを見てたんだけど、本当にたまたまカギが掛かっちゃったんだ。
その後、その場から離れずエンジンをかけ車内でCDを聞いたり、会話を楽しんでました。
しばらくすると山頂付近から光が見える。それもどうやら車らしい。
こんな夜中に山から下りてくる車って何だよ?って俺らにもちょっとした緊張が走る。
今まで散々不法侵入して遊び倒してるんだから逃げようかとも思ったんだけど、 何かその時の車の中の雰囲気が友達同士舐められたくねえ。
みたいな感じで何故か誰も逃げようとか言わなかったんだ。
んで、あれよあれよと言う間に車が目の前までやってきた。
まあ一本道だし当たり前なんだけど、何故かその車はタクシー。
今の時間に山頂で何を?こんな山奥に何故タクシー?って俺達は思った。
んでそのタクシーは何故か俺らの車の数十メートル後ろで停車し、後部座席から二人を降ろし、そのまま俺らの車を追い抜き行ってしまった。
人が降りたので「やべ、ここの別荘の持ち主か?」と思ってたら そいつ等しばらくこっちを見てたんだけど気が付くとゆっくりこっちに向かってくる。
しかも1人は女らしい。真っ赤なワンピースを着てる。
もう1人は明らかに男でスーツ姿だった。
年齢は全く分からないが多分40前後と感じた。顔も暗くて良く見えない。
俺らは微妙に非現実的な出来事にあっけに取られていたと思う。
あっけに取られた俺らをよそに彼らはすぐ車の近くまで近付き、男性が運転席側、女性が助手席側に回りこみいきなりドアノブを引っ張り 物凄い勢いで車の中に進入しようとすんの。
「!」ぎゃー。もう髪の毛総立ち。ヤバイ。
さっきも行った通り偶然カギが掛かっていたためドアは開かない。
でも彼らはそんなのもお構いなしにドアノブを半端無いくらいガチャガチャやってる。
ビビる俺達。
運転手もすかさず車を発進させました。
「うぉー怖えーーー!」
車の中は大騒ぎ。気が付くと皆恐怖のあまり泣いていました。
近くのファミレスに車を止め、皆で「なんだったんだアレ?」みたいな事をギャーギャー話した。
友達がバカで明るい奴らで助かったと思った。
「一番涙目になってた奴は誰だ?」みたいな話しもした。
「俺じゃねーよ!」とか「お前が一番涙目だった。」とか言い合った。
俺はさほど涙目にならなかったお陰で大して言われずにすんだ。
大分落ち着いてから格闘技経験者でイケイケの友人に 何でお前出て行かなかったのと聞いてみた。
こいつはかなりイク奴なので皆不思議がったのだ。
ちなみにこいつは運転手。
そいつはドリンクバーを飲みながら一言。
「多分俺じゃ勝てないから。」
「ぉお?何時も自信マンマンなのに今回はえらく殊勝だねえ。」
誰かが茶化す。
すると運転手のそいつはムキになって
あいつら力半端ねーよ。
目がな、ヤバ過ぎてとても出て行けねーって。
だって黒目しかねーんだもん。アレ絶対人じゃないよ。」
そしてファミレスで朝まで過ごした。
時効だから書くけど俺は涙は出なかったけどおしっこがちょっと出た。
人間本当の恐怖を味わうと小便を漏らすのをその時初めて知った。