今勤めているコンビニでバイトしはじめた頃のお話~現在です。
店長が気さくな人で、なんでも相談しやすいというか、「給料あげちくり~」なんて相談にも乗ってくれたりとか気のいい人なので、「今月だけな。みんなには内緒だぞ」なんて言いながら1万円上乗せしてくれたりする人でした。
私は友人から借りた車をこすってしまって、店長にお金が入用なので給料を上げてほしいと言いました。
店長は「1万円くらいなら…」と言うのですが、7万円くらい欲しかったので、シフトをもっと増やす方向へ話を進めようとしたのですが、学生たちの時間もあるので増やせませんでした。
「じゃあ…」と店長が実家のバイトを紹介してくれました。
内容は、船でどっかの島へ行って、「シャシャク」という花と「サカキ」という花を大量に持ち帰る事。
ただこれだけ。
花と言っても実際は木のような感じでただの葉っぱです。
ちなみにたったこれだけで日給1万~10万。取る量と質と車を運転したか否かで変わります。
後日、店長に運転してもらい、港まで向かいました。
船に乗ったところで一旦お別れ。
2時間ほどで現地へ。何もない無人島でした。
現地につくなり、運転手と私だけだと思っていた船から、やしきたかじんにおっぱいが生えたようなおばあさんが出てきました。
今回の雇い主だそうで、船の運転手はその旦那さんで、自己紹介が終えたところで仕事の説明がはじまり、仕事の説明はサラっと終わったのですが、注意事項が長くとても怖いものでした。
「上から物が降ってきた時には、狐ではない事を確認して貸し出すカッターで首を刈る」
「下から何かに掴まれた時は、貸し出すカッターで突き刺す」
「私以外の人間が山に居たら、貸し出すタバコに火を点けて歩く」
「獅子の頭が浮遊しているのを見たら、怖がらずに拝む」
「襲ってくるもんは全部殺せ」
「お祓いに行けと言われたら、絶対にこっちが定めた祓い屋に行く事」
「お互いを見合わせた時に、狐の尻尾で目を覆われていると判断したら、首を撫でながらそっと剥がし山に帰す」
「道に迷ったらタバコ吸え」
「蛇のような狐に出くわしたら、正座で拝みたおして通り過ぎるまで拝んで、急いで宝くじ買え」
その時は仕事そっちのけで本土へ宝くじ買いに向かうらしいw
もっとあったような気がするが、覚えているのはこれだけ。
超ビビリながら仕事に取り組んだが何事も無く無事に終了。
次は2週間後に仕事を回すと言われ、自宅についたら玄関の扉を開ける前に塩を頭からかぶれと言い渡され、店長の迎えが来て自宅についてその通りにした。
2週間後は違う島に行きました。
そこでは前回の注意事項は一切必要無いとの事。
その日も無事に仕事を終えました。
そこでは大量に花が取れたので、もう目標額には余裕で到達していたのですが、店長から「あの仕事続けたいなら、うちのバイトそっちのけでやってくれてもいいぞ」と言われたので、シフトを減らして続ける事にしました。
シフトを減らしたのには理由があって、大量に花が取れた日は、下山するのに最大で1時間かかるような道なき山を、めちゃくちゃでかい荷物を背負って降りていかなければなりません。
多い日はそれを3往復します。普通の体力ではやってられないくらいキツイ仕事になります。
やしきたかじん似のばあさんは荷物を持ったりしてくれません。
私が切った木から使える花を選別して袋に詰める専門みたいな役割です。
1年ほど花摘みを続けた頃に、県外の島へ泊まりで行くことになりました。
慰安旅行を兼ねた船旅ということで、気を使ってくれたやしきたかじんに感謝。
ご飯はうまいし景色も最高で、「天然温泉ではありません」というプラカードが貼られた温泉も気持ちよかったです。
しかし楽しいだけというわけにもいかず、仕事はあります。
その日はゆったりと寝て、次の日の仕事に備えました。
次の日は雨でした。この仕事、雨だろうが台風だろうがあります。
台風の日は、やしきたかじん似のばあさんがが住んでる島で適当に花を摘みます。
その時は日給2000円です。
島の運送業者に軽トラを借りての仕事でした。
やしきたかじんは真っ先にやることがあるとかで、山のてっぺんまで登るというのですが、70近いばあさんを一人にするわけにもいかないのでついていきました。
頂上付近には、一体だけポツンと置かれた土偶のようなハニワのような物。
それに向かってやしきたかじんは拝んでいました。
その島はやしきたかじん似のばあさんがが嫁ぐ前に住んでいた、生まれ故郷だというのをその場で聞きました。
その土偶の更に上には祖母が守っていた祠があって、うちは代々巫女の家系だという話をしている途中で、ばあさんは何かに気づいたようで、海の方を指さし「アレ、なんや?」と言いました。
私には何も見えなかったので「え?どれ?」と言いました。
「あの茶色いの!アレなんや?」
私には何も見えません。ですが指差す方向、2kmほど離れたところでしょうか。
雨が人の形に避けられているような巨大な何かを確かに見ました。
推定で50mほどの高さに30mほどの横幅(適当で基準は無いけど)の空間だけ雨が降っていないんです。
その物体は動きませんし、特になにをするわけでもなかったのですが、3分くらい眺めていたら消えました。
その後は何もなく、普通に仕事に取り掛かって無事に終えました。
宿に戻り、帰るために荷造りしていたら、ばあさんがかばんの中にあった数珠をゴミ箱に投げました。
「数珠投げるとかあかんやろーwww」と私が言ったのですが、ばあさんは「それはわたしのじゃないからな」と言うんです。
以前にもそんな事が故郷へ帰った時にあったらしく、詳しい話は聞けなかったんですが、私がこの仕事をやめる時に数珠の話と、店長が何故この仕事をやめたのかを話してくれると言われ、はや7年。
まだこの仕事を続けています。コンビニのバイトも。
変わったことも多いこの仕事ですが、給料は多いし楽しいです。
ほんのりと怖い話116