ラスベガスではグランドキャニオンへ行くことのできるツアーがある。
ヘリや飛行機で行けるのだが、途中ごく稀にヘリの事故が起きる。
ヘリ自体が気流に乗らなければ不安定になってしまう造りで、上手くそれに乗らなければ、失速して急降下してしまうこともままある。
あるパイロットから聞いた話なのだが、グランドキャニオンへ向かう途中、過去墜落事故があった地点を通ると、まるでエアポケット現象のように機体が急降下してしまう場所があるという。
彼は「そこでは必ず彼らに引っ張られるんだよ。立て直すのに大変だ」と苦笑していた。
そしてついこの間、同乗していた客がその彼らの姿を見たのだという。
彼らの姿は、下半身がなく目は窪み、頭からどす黒い液体を流し、ヘリの「足」にぶら下がって、まるで登ってこようとしていたのだという。
その目撃があってから、彼はその場所を通るときに
「君らも乗るといい。グランドキャニオンの素晴らしい景色を見れば安らぐよ」
と心の中で語りかけると、機体が引っ張られる感じは消えて代わりに機体が重くなったという。
しかし何故か帰りには重みや違和感が消えていたらしい。
彼は
「彼らはヘリの墜落でグランドキャニオンの景色が見れずに亡くなった方達だろう」
「一緒に連れてって見せてやれば、満足するさ。タダ乗りだがね」
と笑って言った
山にまつわる怖い話7