見つめるばあさん

俺が小学生の時、通学路の途中に駐車場のような雑多と車の止められた空き地があった。
そこを通り抜けると早いので、帰り道には通り抜けていく上級生が多かった。

ある日、俺もそこを通り抜けてしまおうと数歩空き地に立ち入ったとき、空き地の奥にある三軒の古い平屋の借家の一番奥の家に目が止まった。
一軒目の脇には、大きなトラックが止まっていて、その奥に隠れるようにあった家の窓から
目のぎょろりとしたお婆さんがこちらを見ていた。
やばい叱られるかも、とその日は俺は空き地を抜けることを諦めた。

翌日、友達と一緒に空き地を通り抜けようと言うことになって、俺は気になってあの家を見た。
その日はいなかったので、通り抜けてしまった後で振り返ると、あのトラックの影にお婆さんはいた。
じっと俺たちを見ていた。

やばい、叱られるかもよ、と俺は友達に話した。
平気だよ、そんなの。という友達の返事に安心したのか、その後は毎日空き地を通り抜けて帰った。
そのたび、お婆さんは家の中にいたり、木やトラックの影にいたり、とにかく黙って俺を見ていた。

ある日、一人で帰った俺は再び空き地を通り抜けた。
その日、お婆さんは家の中にいて
おいで、おいで、と手をこまねいた
俺はびびって走って帰ったが、その日から3日熱を出して学校を休んだ。

学校に行く途中に空き地に柵が出来ていることに気が付いた。
聞いてみると、三軒あった借家の最後の借り主が立ち退いたため、借家は取り壊され、空き地も含めてマンションが建つと言う。
ところが、その最後の借り主はあのトラックの持ち主で、一番手前の家にすんでいたと言う。

俺は一瞬身の毛がよだった。
あのお婆さんは誰なのか、あれは何だったのか今でもわからない。

ただ工事車両が出入りするため、通学路が変わってからその場所を通らなくなった。
しかし、その後出来上がったマンションの前を通ってみたら、まだ誰も住んでいないマンションの三階の窓にお婆さんはいた。
多分今でも。
俺はあれ以来そこを通ることはない。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?103

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