迷い行者

昔、猟師が山に入って狩猟をしているときのことです。
その日、猟師はめぼしい獲物をとらえられず、あきらめて下山することにしたそうです。
しかし、あきらめるまでがながかったためか当たりは暗くなり始めていました。

猟師は気味が悪くなってきて急いで山を下りたそうです。
ふと下りてる途中で後を誰かがついてくる気配がするのに気づきました。
猟師は同業者が自分と同じように獲物が捕れなくて下っているのだと思ったそうです。
しかし、足音意外にも音がすることに気づきました。
錫杖や鈴、そしてぼそぼそ話し声が聞こえたそうです。

猟師はこれはへんだとおもい岩の物陰に身を潜めて後を追う者達を探ってみました。
すると(ここから虫食いとか昔の字でわかりにくくて間違いがあるかもしれません・・・ごめんなさい;)

「やや見失った」「そんなことないもっとよく探せ」「あの男についていけばきっと村里にでられるはずだ」
「村に下りられればなんとかなる」「あんじょうにすんな」(地域方言で逃がすなよとか無事ですますなよという意味)
など、会話しているのが聞こえました。

猟師は迷い行者という3人の修験者の話を思い出しました。
その昔、その山で若い修験者が修行をしていました。
しかしきて間もない山で山道もわからないため腹が減ったり、怪我をしたりして村里に下りたくても下りられず、そのまま野垂れ死んだという話を思い出したのです。

それからその山には3人の行者が化けて出て、山に入った者の後をつけて村に下るというのです。
そして猟師はおめおめ後をつけさせて村に下らせると、その村に災いが降りかかるという噂も聞いていました。

猟師はどうしようか、どうしようかと岩に身を潜ませながら考え込んでしまいました。
しかし、あまり長い間考え込むと今度は暗くなって自分が下りられなくなってしまいます。
そこで焦った猟師は適当に「わしをつけてきても無駄じゃ!わしも山で死んだ人間じゃ!わしについてきても里には下れんし、食い物ももってないから腹もふくれんぞ!」と叫びました

するとその声の主達は「なんじゃ、残念じゃ」「そりゃあすまんかった」「まったく、いかん」と台詞を吐いて足音や錫杖などの音が遠ざかっていったそうです。
猟師は音が聞こえなくなるのを確認すると、できるだけ足音を立てないように足跡を残りにくいような場所を通り村まで帰りました。

それからその村近辺では、夕方に山に入らないようにして万が一迷い行者に遭遇してしまったら「自分も山で死んだからついてきても意味がない」と答えるようにという習わしができたそうです。

山にまつわる怖い話64

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