中学2年生の時の下校中、人通りの少ない道で100mくらい先に人が二人立っているのが見えた。
自分の母親と同じくらいの歳のおばさんと、これまた自分と同じくらいの歳の私服を着た女の子。
だいぶ近付いた時に、ずっと俺をジロジロ見てる事が判り、ちょっと気持ち悪いなと思った。
そのまま通り過ぎようとすると、おばさんの方が話しかけてきた。
「あなた○○中学?」
「 はあ・・・。」
「2年2組の伊藤さんって子、知ってる?」
伊藤という子は隣のクラスの女生徒で、本当は顔も名前も知っていたが殆ど喋った事も無いような子だったので、知らない振りをした。
「知らないですけど・・・。」
「あら、そう・・・。」
話は終わりかと思ったが、おばさんと女の子は道を塞ぐようにして立っている。
おばさんがカバンからゴソゴソと本を取り出した。
そして話は「人類の幸福」やら「血の浄化」やら「祈らせて欲しい」やら、宗教的な話にシフトしていった。
物凄く面倒臭くなってきたので
「ああ、僕そーゆーのはいいんで。」
と二人の間を割ってそのまま帰ろうとしたら、おばさんが強い力でオレの手首を掴んできた。
「まあそう言わずに。」
おばさんが逃がすまいと手首を掴み、女の子の方が勝手に俺の額に手をかざしてくる。
予想だにしなかった行動を取られて少し唖然としてしまうが、祈られたら負けだと思い
「こういう事を強要しちゃダメでしょ。というか僕本当に急いでるんで。」
と手を振りほどこうとするが、おばさんは手を離さない。目がマジで、ほんのりゾッとする。
「全然時間は取らないから、ね。それにあなた達の血はね、とても汚れているの。」
初対面のおばはんに何でそんな事言われなきゃいけないんだと、イラついてくる。
「いいって言ってんだろ!!」
と思い切り手を振って、おばさんの手を振りほどいた。
おばさんはその反動で1mほどよろめいて、その場に尻餅を付く。
(俺にはわざと自分から転んだようにしか見えなかったが)
そしておばさんと女の子は「暴力を振るわれた」とでも言いたげな表情で見つめてくるが、すぐに笑顔になり立ち上がりながら謝ってきた。
「ごめんなさいね、ホントごめんなさい。」
「いや、すいません。でも急いで帰らないといけないんで。」
そのまま二人に背を向けて家路に付こうとすると、10mほど言った所で
「気が変わったら、いつでもここへ来て。待ってるわ。」
と大きな声でおばさんが言うので、振り返ると二人は満面の笑みで手を振っていた。
(ここへ来て、待ってるわ・・・って、通学路だしこの道は天下の公道じゃ!)
と思ったものも、無視してそのまま帰った。
まあそれ以降俺はその二人に会うことは無かったが、他の生徒も祈りを強要されたとか1ヶ月くらい学校の間で話題に上がっていた。
そして後から知ったことだが2年2組の伊藤さん(仮名だけど)は、その後すぐに転校していた。
その転校とあの二人に、何か関連性があったのかは分からない。
ほんのりと怖い話61