ウサギの飼育

俺は小学校六年を通じて飼育委員だったんだ。
ウサギ飼育小屋は20畳ほどの広さで脱走対策でコンクリートの水槽のような物に土を盛って策を作った物だった。

二年目の春、馬鹿な女子が檻に隔離してあるオスのウサギを放してしまった。
皆知ってると思うがウサギは雌雄一緒になるととてつもない勢いで繁殖する。
三年目の春を迎える頃には餌のキャベツ四玉が一晩で無くなってしまう程ウサギが増殖していた。

四年目の夏、飼育委員長が教頭先生にウサギを「処分」してくださいと要請した。
大量のウサギの糞尿や死体の処理をしていた俺たちはすでに限界だった。
すぐに教員会議が開かれこの申し出は「命を粗末にするのは道徳に反する」と却下された。
対応策として付近の住民に里親を募ったがまったくといって良いほど効果は上がらなかった。
そして忘れもしない夏休み直前の7月18日、事件は起きた。

いつも通り清掃と餌やりをやりにウサギ小屋まで行った俺はある違和感に気がついた。
ウサギがいない、いつもなら土の上を走り回っているはずの数匹のウサギが姿を見せなかった。
もしや…という予感はウサギ小屋に入った瞬間に確信に変わった。
ウサギの糞が異常に少ないのである、普段なら水場に撒き散らしてある糞が全くと良いほどなかった。

俺はこの事を先生に報告し、放課後直ぐに地面を掘り返すように提案した。
しかし学校側は「ウサギが死んだのかはまだわからない、そうであったときの全校生徒に与える影響は計り知れない」と言って掘り返すのを夏休みまで待った。
そして夏休み中に上級生飼育委員計9名が集まり掘り返す作業が始まった。

そこで俺たちの見た物はとんでもないものだった。
ウサギは群生して巣を作る時大きな広場のような集落とそこから枝分かれした個室を作るのだが、大量のウサギ達の全てが中央の集落に集まって死んでいた。

そして死に方も尋常ではなかった。
体の大きなウサギが円になって中のウサギをすし詰め状態にして死んでいたのだ。
中心部にいた子供ウサギは余程の圧力だったのか、見るも無惨な姿になっていた。
あまりにも不可解な行動に驚きながら俺たちは吐き気を堪えて作業を進めた。
揚がった死体の総数は98匹、明らかに異常だった。

学校側も事態を重く見たのか警察に通報、警察も調査をしたが犯人がいるのかいないのかすらわからなかった。
警察の調査によると鍵を破壊した形跡も見られず、近場の獣医に比較的良好な死体を検死してもらった結果死因はショック死だった事がわかった。
しかしそれ以上の成果は望めず調査は一週間で打ち切られた。

その後ウサギ小屋は解体されず業者に追加のウサギを注文し運営を再開した、そして俺が卒業するまでウサギは飼育されていた。
その後ウサギ小屋がどうなったか、俺は何も知らない。

ほんのりと怖い話63

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