夢の中で

平成3年、大学3年生だったとき。
街で、ちょい年下かな~くらいの女性に声をかけられた。
彼女が言うには、自分と夢で何度も逢っているらしい。

しょっちゅう出てきて、夢の中ではかなり親密な関係になっているような口振りだった。
夢に出てくる人が、現実に存在していたことに、彼女はひどく驚いていて、同時に喜んでもいた。

自分はといえば、ものすごい変化球で攻めてきた逆ナンか、その頃流行っていた様々な新興宗教の勧誘か何かかと思っていた。

当時自分はバンドをやっていて、その時もリハが終わって出番待ちしてるところだった。
彼女はそのまま自分にくっついていて、ライブも観てくれた。
その後ライブにはよく来てくれて、終わった後に声をかけられ、そのうち打ち上げにも参加するようになった。

そこらへんから彼女が増長しだし、番号を教えてもいないのに、うちに電話をかけてくるようになり、大学のサークル室にまで押し掛けるようになった。
あまりにもきもいので、関わってくれるなと言ってからは、そういう行動はなくなった。

そんな彼女を思い出したのは、先日の日曜日のこと。
妻が、学生時代の自分のアルバムを引っぱり出してきて、これは誰だとかここはどこだとか2人で話していた。
みんなで遊んでいる写真の中に、栃木県にある那須ハイランドパークで撮った写真が何枚かあった。

大学1年の秋に、サークルの何人かでツーリングがてらに行った時の写真だ。
自分と、当時付き合っていた女性がツーショットで写っている右後ろに、通行人っていうか他のお客さんが、ちょうど振り返って一緒に写ってた。

彼女だった。元カノを、凄い形相で睨んでた。妻が「なんかこの人怖いよね」と言うので初めて気づいた。

ほんのりと怖い話63

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