夏に田舎へ行った時、不思議というか怖いというか、そういう体験をしたので書いてみる。
親父の実家が田舎の古い家で、おばあちゃんとおじさん夫婦(親父の兄)が住んでる。
おじいちゃんは既に亡くなってて、おじさんとこの子供は都会で別居。
年に2回、盆と正月に集まるくらいで、その時には墓参りだの掃除だのをする。
今年は離れの横にある小屋の大掃除だってんで、親戚一同がくそ暑い中でバタバタやってた。
小屋の中にあるいろんな物を表に出して、炎天下で虫干し&仕分け。
古いトースターや農機具だとかマッサージ機なんかがわらわら出てきて見てると面白いけど、そういうのはまあゴミにしかならないんで捨てる。
包装紙や布切れなんかも小まめに取っといてあるのが昔の人なのかな。
で、その中にあった古いダンボール箱の中に、布みたいな和紙にくるんである丸い玉。
紙の中から出てきたのは水晶玉?透き通った直径15センチくらいの玉。
おばあちゃんに聞いたら、昔からあって全然使ってないけど何となく捨てられないんだとか。
日に透かしてみると古いものとは思えないくらい透明で、向こうの景色がゆがんで見える。
「売れば高いのかな?」「じいさんはガラスじゃないかって言ってた」
そんなことを言い合いながら、ダンボール箱ごと積み上げてある荷物の上に置いた。
しばらくして雲行きが怪しくなってきたかと思うと、いきなり大雨になった。
大慌てで虫干ししてた荷物を屋根のあるところへ移している最中荷物が当たって水晶玉が入ってるダンボール箱が下に落ちた。
中を見ると水晶玉が割れてた。スイカを落としたみたいに見事にパックリと。
で、その破片の中心に小さな箱があった。
一辺5センチくらいの立方体。軽くて蓋や開口部はない。
漆塗りみたいに艶のある赤でキズもなく、何というかきれいな箱だった。
でも、この箱はどこにあったんだろう?
状況からみると水晶玉の中に入ってったぽいけど、さっき透かしてみた時には中に何かが入っているようには見えなかった。
いろいろ情報が多すぎて動作がしばらく止まったけど、とりあえず雨から避難するために箱を持って屋根のところへ。
一通り荷物を移したら一旦家に入って雨が止むのを待つことに。
茶を飲んだり菓子食べたりしてるうちに晴れ間が出てきたので作業再開。
休憩中に水晶玉を割ったという話をしていたので、一同で箱のところへ。
ところが、ダンボール箱は空になってた。
水晶玉も小さな赤い箱もない。和紙の中に小さい破片だけが残されていた。
誰かがどこかへ移したのか?と思ったけど、誰もそんなことはしていない。
荷物の山を探したけどどこにもなかった。
と、何気なく足元を見て気がついた。
そこは屋根付の通路みたいになっていてコンクリートで舗装してある。
そのコンクリートの上に泥で足跡がついていた。
外庭から水晶玉が入っていた段ボール箱まで、小さな足跡がポツリポツリと続いている。
ちょっと間があいてからゾワっときた。良くみると裸足だし。
みんなも同じ感じで、ちょっとシーンとなった。
気味が悪いから、残りの掃除や仕分けは適当にして墓参りに行った。
不思議なことはそれだけ。
後は普通に酒飲んだり辛気臭い話があったり、まあ普通の夏の恒例行事。
田舎から家に帰ってからも水晶玉のことは気になってた。
透明な玉に赤い箱が入ってたら普通見えるだろう。
でも、屈折の具合で見えなくなることがあるのかな?
調べてみたけど何も分からない。そういう情報もないし。
ただ、さっき思い出したことがあって今更気がついたんだけど、あの足跡は行きだけで帰りがなかった。
箱のところまで行って、その後どうやって帰ったんだろう。
足を拭いたのか?足跡の上を踏んで帰ったのか?
何となく推理小説みたいだな~って思ったからちょっと書いてみた。
不可解な体験、謎な話~enigma~ 90