別に怖い目には遭ってないんだけどさ。
学生の時、構内にお気に入りの休憩場所があった。
高台にある棟の裏手で崖っぷちのようになっていて。
見晴らしが良し&人気無しで、講義の合間に一服するのに良い場所だった。
ある日、いつもの様にそこへ行ったら、崖すれすれのところで正座して、上半身をぐるんぐるんと回転させてる奴が居た。
同じ歳(当時自分は20歳)くらいの男で、小奇麗なシャツ着てて。
真昼間だったし、普通の奴に見えたから怖くは無かった。
自分の大学は変人が多かったので、パフォーマンスの練習でもしてるのかと思った。
「俺様のお気に入りスポットで、何キモいことしとるんじゃああああ」ってムカついたけど。
そんな奴の近くじゃ落ち着いて一服出来ないから、その場を離れた。
それからも何度かそいつには遭遇した。
毎回同じように、上半身ぐるんぐるん。シャツの色は、ちょくちょく変わってたけど。
「俺様のお気に入ry」ってことで、遭遇したら去るようにしてたから、誰なのかは把握出来なかった。
四年になってから、高台の棟の授業をあまり取らなかったので、お気に入りスポットには殆ど行かなくなった。結局、そいつが何だったのかは分からぬまま卒業。
それから六年経って。学校の教授に、講義の補助というか手伝いみたいなので呼ばれたのね。
それが終わってから、教授とかと飲みに行くことになったんだけど。
飲み屋の予約まで時間が空いたから、久々にお気に入りスポットに行ったのよ。夕方に。
歩きながら煙草を箱から出して口に咥えて、さあライターで火を点けましょうかって所で到着したらさ。
例のそいつが居た。学生時代と同じように、正座でぐるんぐるんと回転しながら。
頭の中に重りを落とされたみたいに、ゾクッとした。漫画みたいに、口からポロっと煙草落とした。
でも勿体ないから煙草は拾って、それから無言で全力疾走して逃げて、教授たちのところに戻った。
同じ年頃だった奴が、何で六年後も居たのか。
いやまあ、もしかしたら卒業後に学校の職員になったのかもしれない。
でも、普通に生きてる人間だったとしても気味が悪い。
ほんのりと怖い話67