遭難

去年の秋口、皇海山目指して朝早くから袈裟丸廻りで上がったんんだが、帰り道で庚申山荘を目指して下りてたつもりが、道を見失い薮漕ぎしていた。
すると目の前にクマがいた(昔に飼っていた犬の名前)。
体力も精神的にもギリギリだった俺は、何の気なしにクマについて行った。
するといつの間にか山荘通り越して、元足尾鉱夫の宿泊所みたいなボロい建物の側にいた。
クマもいない。

どうやって?どのくらいで?辿り着けたかもよくわからないまま、近くの博物館まで歩いた。
そばのトイレで鏡を見た時は心底ゾッとした。
なんでか顔も身体もボロボロ、ザックも無い、辛うじて腰廻りの貴重品と車の鍵はあった。
朝まで電車まちしながら過ごしてなんとか車まで辿り着けたが、よく考えたらクマはもう五年前には死んでた。

多分どこかで滑落して、記憶喪失してフラフラ歩いていたんだと思う。
そう言えばクマとは、この辺りでよく沢とか山菜とりしながら歩いていた。
きっとその頃の記憶のお陰で下山できたんだと思う。
しかし今だザックとテントは何処にいったか分からずじまい。
この間、記憶取り戻した所(元鉄橋)辺りにお供えとお酒でお礼してきた。
そんなお話。

山にまつわる怖い話69

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