さゆりちゃん

4、5歳の頃、家のすぐ近所で知らないおばあさんに
「さゆりちゃん!大きくなったねぇ。」と話しかけられた。
私の名前はさゆりじゃないので、ちがうよ、といい返しおばあちゃんから離れた。しかし、中学校に上がるまで、忘れた頃に知らないおばあちゃんに「さゆりちゃん」と話しかけられることが続いた。

社会人になり、地元(東北の田舎)から離れ、東京での生活に慣れ始めた頃、住んでるアパートのそばで、知らないおばあちゃんに
「さゆりちゃん!大きくなったねぇ!」と手を取り握られた。
幼い頃からの記憶が残ってたため、ゾッとして
「すみません、人違いですよ。」と言ったが
「さゆりちゃんでしょう。だってあなた、さゆりちゃんよ?」
と優しい笑顔で言われた。

「人違いです!」と言ってその場を離れた。
優しそうなおばあちゃんだったため、逃げるように去ったことに罪悪感はあったが、
ひどく嫌な気持ちだった。

その2年後、東京を離れ地元に戻った。
実家で暮らし、仕事から帰ってきて寛いでいたら、知らない市外局番の電話番号から、携帯電話に着信があった。
間違い電話だろうと思い、何の気なしに出たら
「さゆりちゃん!おばあちゃんよ~。今度、遊びにいらっしゃいよ。さゆりちゃんね、その時、お母さんに~~~うんたらかんたら~~

私は心底ゾッとして、「間違い電話ですよ!!」と言って、電話を切った。
それ以来もうここ数年、さゆりちゃんと間違われることはないけど、私は今も誰かのさゆりちゃんなんだろうか。
それとも、話しかけてきたのは、全部違うおばあちゃんだったので、みんな亡くなったりしてしまったんだろうか。

私の、ほんのり怖くて、心底ゾッとする経験です。

ほんのりと怖い話82

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