学生だった頃、夜に有志でやってた勉強会の帰りに学生街でへんなもの見た。
定食屋や茶店やスナックが並ぶ古い通りを、友人達とそぞろ歩いてたんだ。
時刻は8時半くらいでまだ人通りも多い中、ふと向こうから歩いてくる男2人組に目が止まった。
理由はわからない。
一見何の特徴もない自分らと同じ学生風の2人だったから。
ところが視線を外せないまま2人との距離が15メートルほどになったとき、変なものを見ちまった。
2人並んだ右側のやつのさらに右側、ちょうど顔があるぐらいの高さに浮かんで並んで近づいてくるものを。
それはA4くらいの大きさの四角い真っ黒な『紙』、もしくは『穴』だった。
とにかくそう見えたし、紙?穴?しか頭に浮かばなかった。
自分は黙ってそれを凝視しながら歩き続け、すれ違う瞬間にそれの横からと後ろからのビジュアルを確認しようと身構えていた。
しかし自分の真横に来た瞬間、それは完全に見えなくなった。
まるで厚みゼロの2次元のモノのごとくフッと消えてしまったんだ。
びっくりして歩き去っていく2人連れをしばらく見送ったが、もう黒い四角は影もカタチも見えなかった。
今でも時々あれは何だったんだろうと思う。
不可解な体験、謎な話~enigma~ 107