そろそろ時効かと思うので書いてみる。
不動産勤務です。
俺がまだこの業界に入りたての頃、自分が居住中の一戸建てを売りたいという人を担当した。
理由は離婚による売却で、嫁と子供が家を出て行って一人で戸建てに住むのは広すぎるから売却したい、という割とよくある話だった。
現物を見に訪問したんだが、最初にビビったのは臭い。
築まだ10年未満の物件なのに何故か家の中から異臭がする。
出迎えた40代くらいの男性がその異臭の原因だと気づいた。明らかに浮浪者の臭いだった。
玄関からあがりリビングに入った瞬間見えたのが、あちこちに転がる酒の瓶と割れた破片。
さらには、あちこちの壁がボコボコに穴があいていて、よくみるとその中のいくつかに、黒っぽい(多分血)がこびりついていたり・・・
その時、俺一人だし、これ、このまま俺殺されたらどーしよう?とマジで怖かった。
その後、色んな話を聞いたり必要書類を集めたりしながら、
「これ、このままじゃ売れんだろうなぁ・・・でもリフォーム入れるだけの財力もなさそうだから、業者買取になるんかな」
と思っていたところ、突然「あんたこれ見たらわかるだろ。俺、アル中なんだよ」と自分の人生を語りだした。
最初は親から受けた虐待の話から、中学くらいに不良になり、その後チンピラみたいなことをやりながら、今の仕事(建築関係)に就職して嫁と知り合った。
ここまでは割りと普通だったんだが・・
この後何故か、嫁が悪い嫁が浮気をした嫁が親にちゃんとしつけをされていなかったと、嫁の攻撃が始まった途端、目が尋常じゃなくなった。
なんつーか、俺じゃなく俺の肩の向こう側の一点をジーッと凝視しながら話すんだよね。
これが何故か凄く怖い。
で、嫁から反撃されたので壁がこんなことになったとか、最終的に嫁が荷物をこっそりまとめているのに気づき、このままじゃ俺が置いていかれると思ったので、「わざと嫁が丸腰の風呂を狙って襲ったんだよ」と笑いながら言ってた。
「襲った?」と聞き返したら、
「うん。まあね。そういえば風呂場まだみてないよね。ちょっと荒れてるから」
とフラッと立ち上がって風呂場に連れて行ってくれた。
正直、嫁の遺体が転がっているかも!と焦ったけど、遺体は転がっておらず。
ただ、風呂場のドアが折れ曲がって割れて黒いものがついていて、風呂場の中も一面黒い塊みたいなのが残っていて・・・
「掃除面倒だからあれから風呂はいってないんだよね(異臭の原因がこれらしい)でさ、これ、このままじゃ売れないよねぇ・・?掃除会社とかいくらくらいすんの?」
と妙に冷静に聞いてきたおっさんはかなり怖かった。
余談だけど、このおっさんの嫁と子どもの行方は俺は知らない。
当然、売買に関係ないので聞くこともなかったんだけど、あれだけの出血をした嫁が旦那を訴えないものなんだろうか?
普通病院に担ぎ込まれてそこから警察に連絡がいくもんじゃないか?
そもそも訴えられてたら売買なんて無理だろうし、ってことは訴えられてないことだし、どこかのシェルターにでも逃げ込んで、そのまま何とか親子二人で頑張っているんだろうか?
そうであって欲しい、と思わざるを得ない。
(おっさんの経歴は適当に捏造して嘘書いてます)
ほんのりと怖い話115