謎の男の声

幼稚園児の姪が誘拐されたことがある。

私の実家は事情があり何度か引っ越しをしてた。
何度目かの引っ越しで縁もゆかりもない土地に行き、半年ぐらい経ったときだった。
実家は私の両親と義姉と姪の4人暮らし。
その日は兄の法事の打ち合わせで、私も実家に行ってた。

私が幼稚園にお迎えに行く手はずになっていて、園にも伝えてあったんだけど、行ったら姪がいない。
お迎えが来て帰ったと言われて真っ青になったよ。
迎えに来た人は親戚だと名乗ってた、義姉のことも私のことも知ってたと園も困惑。
直ぐに警察を呼んだ。実家にも連絡して、実家からも警察に通報して貰った。

警察に心当たりを聞かれて「あります」と。
念のために残しておいた私の元婚約者の写真を見せて、義姉のストーカーだと説明した。
当時はストーカーなんて言葉はなかったけど。
園の人もこの人だというので、警察から元婚約者の実家に連絡してもらい、現在の住所を聞き出した。
私の実家にも警察がむかい、事情を聞きつつ待機。
私も事情を聞かれた後、実家に帰るように言われた。

そして警察が元婚約者の家(県外だった)に向かった。
家には誰もいなかったそうで、帰ってくるのを見張っている、行き先が判らないから向こうからの接触を待つしかない、と言うことだった。
真っ青になった義姉が、「夫さん、〇〇ちゃんを護って」とずっとつぶやいてた。
母は仏壇に向かった拝んでた。何かしらしてないと耐えられなかったんだと思う。

結論から書くと、姪はその後直ぐ無事発見された。
元婚約者が泊まっていたホテルからの通報だった。

姪が保護された時のいきさつが、警察にも聞いたけどおかしいんだよ。

・ホテルのフロントの内線に「苦しい、助けてくれ」って男の人の声。
・ホテルの別の場所を掃除していた人に、「ツレが女を刺した。警察と救急車を呼んでくれ。頼む」と告げて立ち去った男がいた。
・駅前の交番に「女の子が誘拐されてる。××ホテルの▲▲号室です。助けてあげて欲しい」と通報。
 110番通報ではなかったそうだ。
・消防署にも「××ホテルの▲▲号室です。苦しい、助けて。早く来て」と通報。これも119番通報ではなかったそうだ。

それで騒ぎになって姪は保護された。数時間のスピード解決だった。
電話は誰がかけたか判らなかったし、掃除の人も立ち去った男の顔を覚えてなかったらしい。
それで我が家では、兄が娘を助けたという事で納得している。

その姪が帰省の時に、紹介したい人がいると言ってるそうだ。
義姉からは、私もそれに合わせて帰ってきて欲しいと連絡があった。

ほんのりと怖い話118

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