話しかけてはいけない

爺さんから聞いた話。

父からの虐待がひどすぎたために、爺さんが兄を引き取る事になった。(当時兄14歳)
兄が出て行ってから俺は兄とは話した事が無い。今現在も行方不明。

兄は嫌がらせが好きな婆さんとよく喧嘩をしていた。
部屋にいる時は勉強をしているから話しかけないで欲しいとか、ご飯は自分で作るし貯金があるから構わないで欲しいとか、そういった事で喧嘩になる事があったそう。
しかし、人が嫌がることをやりたい婆さんはそれをやめなかった。

気を散らすようにわざと大声で叫びながら部屋の戸を開けたり、阪神が勝ったとか高校野球はどこが勝ったとか、お風呂に入ってても大声で兄に話しかけ嫌がる事を続けたらしい。
そのうち兄は説得を諦めて婆さんを無視するようになり、爺さんが婆さんを止めるようになった。

ある日、糖尿病の通院で爺さんがおでかけするついでに兄に何か買ってやろうと部屋に入った。
「病院へ行くけど、たまには一緒に出かけないか?」と声をかけるが兄は聞こえていなかった。
机に向かって勉強するばかりで全く反応しなかった。
聞こえていないと思った爺さんが、もう一度兄に声をかけようとした時、兄の耳からお釈迦様が出てきて爺さんが喋るのを止めたそうだ。
その日を境に爺さんすら兄に声をかけなくなった。

それから2年して大学進学のために兄は一人暮らし。
大学卒業の時に連絡は寄越したものの、それ以来連絡はこず、連絡手段もなく兄は行方不明になった。

たぶんお兄さんな自発的に行方をくらましたのかな?っと思ったけど。
それより、耳からお釈迦さまのところ、もうちょい詳しく教えてほしいな。
例えばそれをみたお祖父さんが恐怖を感じて、話しかけるのを辞めたんかとか。

ほんのりと怖い話121

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする