霊園沿いの道路

洒落怖と迷ったけどこっちへ…従兄弟の兄ちゃんの話。

俺が高校の頃なんだけど、部活で遅くなったもんで近道で霊園沿いの道路を通ったのよ。
そしたら背中にぞくりと悪寒を感じて、耳元で何か囁かれた…ように感じた。
それは気のせいではなかったらしく、その日枕元に女の人が立った。
夜中になんか気配を感じて目覚めた瞬間金縛りに。
目線だけ動かせるから横を見たら、髪が長くて服が白い…事はなく、ショートヘアで服装は今風だけど、凄い目つきの女の人がこっちを見下ろしながらニタニタ笑ってた。
そのまま意識が遠くなり目覚めたら朝だった。

それで終わりだったら良かったんだが、忌々しい事にその次の日からも枕元に立ってきやがった。
見てしまうとダメな気がして起きても目は開けないようにしてたけど、それでも耳元でボソボソ囁いたりしてくる。
夢だと思うようにしてたけど、それが続くもんで心身共に疲れ切ってしまった。

親にも同級生にも先生にも心配されたけど、変な意地であれは夢だからと自分に言い聞かせて、周りの人には最近よく眠れないとしか言ってなかった。
実際に起こってる出来事だとは認めたくはなかったのからなのだが、流石に4、5日も続くとこれ以上意地張るのも限界が来たもんで、親に相談しようと思ってた頃に、救世主が我が家に泊まりに来た。
従兄弟の兄ちゃんである。

兄ちゃんは日曜日に、俺の家の近くの美術館だったか博物館だったかに行くだかで泊まりに来たはず。
普段ならゲームしたり馬鹿やったりするんだが、俺は疲れててまともに相手できなかったな…
兄ちゃんにも大丈夫かと言われたけど、最近よく眠れないとだけ言った。
兄ちゃんからは、寝る時間になったら腹パンして強制的に寝かせてやると言われて、それで少し笑って気が楽になったのはよく覚えてる。
それもあってか久しぶりに寝つきは良かった。

事が起こったのはその日の夜中で、いつものように目が覚めた。
でもその日はあの気配を感じてではなく、トイレに行きたくなったから。
あの気配は全く感じなかったのと、兄ちゃんと話して気が楽になってたのと、膀胱が悲鳴をあげてたもので、トイレに行く事にしたんだがそれがいけなかった。
部屋を出て廊下の電気をつけようと、少し離れた電気のスイッチのところまで5、6歩歩いたら、突然あの女の人が真横に立った。
体は動かないけど首だけはなぜか横を向いて行って、その顔を直視させられた。

あのニタニタ笑いはもう無くて、なぜか知らんが明らかに憤怒の表情だった。
俺の中ではいろんな感情が駆け巡ったよ、理不尽だとかここで死ぬのかなとか色々ね。
その時いきなり廊下の電気が付いた。
同じくトイレに行こうとした従兄弟の兄ちゃんだった。
その後は何を話したか覚えてないけど、とにかくトイレについてきてもらって部屋まで送ってもらった。
電気が付いた瞬間女の人も消えたからか、兄ちゃんには俺以外何も見えてなかったようだった。
その日はなぜか俺はもう完全に気が楽になって、久々に朝までゆっくり寝られた。

次の日の朝に、兄ちゃんがおかしな夢をみたと言う。
金縛りにあって目を開けたら、ショートヘアの女の人がすごい形相で首を締めてきたらしい。
絶対にあの女の人で、兄ちゃんの方に行ったのかと思った。
兄ちゃん曰く、とりあえず金縛りを解いて、首を締められながらも、この家の人の知り合いかとか、もしかしたら幽霊ですかとか色々聞いても返事なし。
最後に離さないと殴りますよと聞いても返事がなかったもんで、思いっきりぶん殴ったらしい。

その後は、馬乗りになって殴り続けたら消えたからそのまま寝たと。
よく幽霊に触れたねって言ったら、幽霊かは知らんが、向こうが首絞めてきてるのにこっちだってそりゃ触れるだろ、みたいな事言われて、そんなもんなのか…って思った。
兄ちゃんの中では完全に夢で片付けられてるみたいだけど、あれが効いたのか次の日からは全くあの女の人が現れなくなった。
ちなみに金縛りは舌打ちを繰り返せば解けるらしい。

兄ちゃんの首に手の痣が…と言うこともないのであんまり怖くないな。
これだけの話。

ほんのりと怖い話122

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