リア消5年だった時、夏休みに昆虫取りに一人でテント担いで福井南部の山に入ったんだ。
標高800メートルぐらいのそんな高くない山で、中腹ちょっと上ぐらいまできれいな沢があるところだった。
マイマイカブリからオニヤンマまで色々とって、夕方飯食い終わって沢で食器洗ってたら、箸流しちゃったのね.
まあ、フォークあるしいいか、とか思いながら他のもん洗ってたら上流からその、流しちゃった箸が流れてきたんだ。
そこの沢は高度にしてはかなりゆるい流れのなんだけど、逆流したりループになってるような流れじゃないのね。
念のため確認しながら歩いてみたんだけど、やっぱり普通に流れてるし。
戻って木の枝とか流してみたんだがやっぱ戻ってこないんだ。
プラスチックだと静電気でも起きるんだろうか、とかひらめいて、もう一回お箸を流してみようと思って、箸持って沢に近づいた瞬間、
「おいおい、いっかいしかかえしてやらんぞ?」
って野太いというか、チェロの音みたいな声がはっきり聞こえた。
笑い混じりで非常にフレンドリーな感じで、地元のイントネーションだった。
前は沢だし、後ろは砂利と藪と木の葉だらけの獣道だから、少なくとも半径100メートルぐらいには人がいなかったはず。
今思えば不思議なんだが、その時は
そうか、返してもらえないんじゃ明日ラーメン食べる時困るな
とか思って素直に止めたよ。
山にまつわる怖い話4