陸奥と筑波

戦艦陸奥

一時期常連だった模型屋の店長がえらい年寄りで、聞けば旧海軍で軍艦にも乗っていたとのこと。
ああ、それでショーウィンドウにウォーターラインの軍艦が並んでるのね。

その店長から聞いた話。

乗っていた戦艦が瀬戸内海に停泊していた時のこと。
真夜中、夜衛の当番なんで見まわり時間を待っていたら、自分の前に見まわりに出ていった新兵がガタガタと駆け込んでくる。

すわ、なにごとかと思えば新兵震えながら「班長、出ました出ました!」と繰り返すばかり。やっとのこと聞き出してみれば、三番砲塔に女が立っているという。

なにを馬鹿なことを言っているのかと思い、小銃を持って三番砲塔へ向かうが、特に異状なし。
なにかの間違いだったのだろうと戻ろうとしたその時、背後からけたたましい笑い声が降りかかってきた。

驚いて降りかえると、三番砲塔の上に女が立っている。真っ白な浴衣のような着物、真っ赤な洗い髪を振り乱し、大きな口を開けて笑っている。角度から考えて、身長は3mはあろうかという怪物。

誰何する気も起きず、わっと叫ぶとまっしぐらに逃げた。
翌朝からひどい熱を出し、艦内医の手にも負えず呉の病院へ搬送された。
その日の正午過ぎに乗っていた戦艦は不審火で爆発、沈没してしまったとのこと。

「爆沈の当日に艦を降りてるから憲兵に目をつけられて、そっちの方が怖かった」

と、店長は言っておりました。

戦艦筑波

戦艦筑波は謎の爆沈の前日、凄まじい形相をした女の幽霊が目撃されている。
随分前だからよく覚えてないが、何かで生き残りの水兵の手記が載ってた。 

事故の起きる数週間前、艦上に火の玉が飛び回るのが見られた。 
それを見たほかの艦は火災かと思い大騒ぎになり、筑波に連絡しようとしたらすぐに火の玉は消えた。 
すぐさま調査探索が行われたが何も発見されず、この事件は原因不明のまま終わった。

事故の前日には件の水兵その他数名が(>>315)と似たような女を見た。 
こちらは髪を振り乱し襲い掛かると見えたので慌てて逃げた。 

士官に報告し、士官が恐る恐る現場を検めたが何もいない。 
結局見た他の水兵数名とともに顔が曲がるほど殴られたが、次の日に火薬庫から原因不明の出火。 

戦艦筑波は大爆発を起こし沈没。
この水兵は甲板だか艦橋だかにいて吹き飛ばされ助かったそうな。

海にまつわる怖い話・不思議な話5

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