ずいぶん昔に聞いた話なので、ところどころ記憶が曖昧なのですが、ヒサルキという名前と>>217-219の話に共通点があると思うので、書いてみます。
村の年寄りから、キヒサル(キヒザル)という話を聞いたことがあります。
聞いただけなので字は分からないですが、話の内容からすると「忌避猿」となるのかもしれません。
キヒサルは群れからはぐれた猿を狙って体の中に入り込みます。
乗り移られた猿(以下キヒサル)は獣を殺し、その肉を食うようになります。
また、その外見を利用して猿の群れに近づき、手当たり次第に殺して食べます。
その食欲は尋常ではなく、キヒサルが現れた山では獣の数が一気に減るとまで言われています。
結果、山には獣の死骸がゴロゴロ転がることとなり、それで猟師や杣はキヒサルの存在に気付くのです。
共食いをするキヒサルを、特に猟師は忌み嫌います。
ただ、トラバサミや柵で捕らえても、キヒサルの本体(ヌシ)は乗り移った体(グヨリ?)から逃げてしまいます。(そんな時、残されたクヨリは抜け殻のように、がらんどうになっているそうです。)
また、鉄砲で撃ってもキヒサルは、なかなか死にません。
だから、キヒサルが現れると、猟師と杣は手分けして山狩りをします。
人と違って、キヒサルは道を通るとは限らず、その一方で火や金物の音を恐れるので、松明を持って銅鑼や半鐘、鍋などを叩いて、山裾から山頂へ追いやるようにします。
キヒサルが近くにいる気配は匂いで分かるそうです。(私が聞いた話では、キヒサルが近づくとサビのような匂いがするとなっていましたが、これは金気臭い匂いではないかと推測します。)
キヒサルを見つけても、間違っても触れてはいけません。
(ただ、その理由や触るとどうなるかは覚えてません。)
山狩りに参加した人は、ひたすら山頂近くに設置した罠のところへキヒサルを追い込みます。
草を刈った平地に追い込んだら、木の上に渡してある油を染みこませた布をキヒサルの上に落として捕らえ、すぐさま焼き殺します。
ヌシの姿を直接見ると目が潰れると言われているので、このような方法を使うのだそうです。
キヒサルの起源は分かりません。
もしかしたら、何らかの伝染病(狂犬病みたいなもの)に対する恐怖がこのような怪物(妖怪?)を創造したのかもしれませんが、猿を媒介する伝染病が当時の日本に存在したのかは、私の知識ではなんとも言えません。
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