道案内

俺じゃないけど友人(以下A)の体験談。

ある日の深夜、Aは友人に金を貸しっぱなしだったことを思い出し電話をかけた。
深夜に電話をかけて金の催促なんて非常識だけどAはその時金に困っていて、もしすぐ返してくれるならなかなかの大金が返ってくる予定だったとのこと。

電話をかけた、と簡単に言うもののAはその友人と重大な連絡を取る機会が無かったため基本はLINEやSkypeで会話していた。
そのため普通に電話をかけるのは初めて。LINEやSkypeが使えない時用にメモってあった電話番号を見ながらキーパッドに入力してかけたらしい。

数回コールしたのち、低く通った声で「もしもし?」と出た。
Aは友人が電話に出るなり金を返せとまくしたてた。
すると友人、今日買い物のついでに金を下ろしたから今すぐ返せる金が手元にあると応答。
それならいいかと安心したAはいつも通り友人とくだらない話を開始。

話題はセブンイレブンのコマーシャルでやっていた食べ物に。
あれ美味そうだよなーと何気なくAが言ったところ

友人「じゃあさ、俺の家の近くに毎回品切れ率が低いセブンあるからさ、そこ寄るついでに俺の家来いよ。」

それは名案だと思い支度をして、携帯片手にチャリを漕ぐA。
友人の家の場所を忘れたと言うと電話で案内してくれるとのこと。

「真っ直ぐ行ったら突き当たりにパーキングエリアあるだろ?そこ右に出て大通りまで」
「弁当屋あった?じゃあさ、そこの横に細い道あるから入って。近道になるから」

友人の指示が的確で分かりやすかったこともあり、家の場所を思い出してきたA。
しばらくチャリを走らせているうちに完全に思い出す。もう電話の案内はいいなと思い一言言って電話を切った。

友人宅に到着。
しかし、部屋が暗い。
あいつあの短時間で寝たのかな?と思い呼び鈴連打。
すると友人が全く予測していませんでしたと言わんばかりの不機嫌な顔で出てきた。

「何だお前!?時間考えろよ!?ふざけんな!!」

Aも言い返す。

「お前が今から金返すっていうから来たんだろうが!!!」

友人は

「は?金?ああ、返してないな。けど俺そんなこと言ってないぞ?第一、お前に電話してないし。」

その言葉を聞いて不思議に思ったAは携帯を出して、通話履歴を見た。
やはりそこには友人の電話番号。
この履歴を友人に見せてはい論破。と思っていたのもつかの間、衝撃の事実が友人の口から飛び出した。

「いや、あのさ、俺が自分の電話番号覚え間違えるってことは無いと思うけどさ、お前この番号違くね?」

段々怖くなってきたので友人に念のため携帯で確認するよう頼む。
やはり番号はAがメモを間違えて取っていたことが発覚。
つまりあの電話は完全に間違い電話だったらしい。
一連の流れの後、友人は恐怖に怯えているAに優しく声をかけた。

「まあ、あのさ、お前が間違い電話かけた相手もたまたま金の件に心当たりがあったんだろ。すげえ偶然だなww。金はさ、悪い。今週中には返せるから。」

しかしAの恐怖心は収まらない。理由を友人にまくしたてるA。

「だって!だってな!俺、間違い電話の相手に自宅からここまで案内してもらったんだぞ!!」

その一言で友人もゾッとした。
事実ならばAの家どころか友人の家も何者かに割れているからだ。

この出来事もあり、2人は引っ越したらしい。
そしてAは電話に怯えている。
理由は言うまでもない。
自分にかかってくる電話に出たらまたあの友人に似た低い声の奴が出るかもという予感がするからだ。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?317-2

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