なんとか亭

あまり怖くないし、文章も上手くないのですが昔の思い出を投下いたします。

転勤で札幌に住んでた頃の話。

といっても、そんなに昔ではなくある程度最近の話なんだが、会社は札幌の中心街、札幌駅の近くにあって、夜21時くらいまで働いていた。

一人暮らしの俺は会社から自転車で15分くらいのアパートに住んでいた。
毎日会社と家との往復で特に遊ぶこともなく、働いて食べて寝ての繰り返しの日々だった。
冬は(雪が降る為)自転車通勤が無理だが、夏は毎日同じ道を通って帰っていた。

ある日のこといつものように、北に向かう一方通行の道路を自転車で走っていると、暗い中、北20条くらいの十字路の左側に、クリスマスの電飾のような明かりがピカピカと綺麗に光っているのを見かけた。
いままで何度もここを通っているが、見たことが無かったので、ちょっと気になって近くまで行ってみた。

そこには看板に「なんとか亭」と書いてあり、cafeかレストランか、とにかくお店だった。
時間はいつもより1時間くらい早い20時頃だったので、いつも通る時は閉店してるお店なんだなぁとその時は軽く考えた。
ちなみに「なんとか亭」というのは正式名称ではなく、「なんとか」の所には何かが入るんだがそれがどうしても思い出せない。

ちらっと外から店をのぞいてみると、少しこじんまりした雰囲気だが大きめの店内にお客さんがぽつぽつと居て、アンティーク風の雰囲気の中、店主らしき女性が料理を作っている姿が見えた。

なんかレストランかな~、仕事が早く終わった時にでも寄ってみよう!とその時は思って帰宅した

毎日忙しい中過ごしていると、そんなこともすっかり忘れ、またいつものような日常が始まる1か月後くらいにまた早く帰れる日があり、ふと「なんとか亭」の事を思い出した。
帰り道、その店を探しながら自転車に乗る。

左側にあったよな~と思いながら、十字路に差し掛かるたびに左を見るがその店はない。
あれ、もっと北だったかなと思い進むが無い。
とうとう家についてしまったが、その時は見過ごしてしまったのかと思っただけだった。

次の日も早めに帰れたので、また探す。
しかし十字路があるたびに左を見ても、あのキラキラ光る電飾と看板が無い。
またもや家についてしまった。どうしても気にになった俺はネットの「食べログ」って奴でお店を調べた。

「なんとか亭」、、、「なんとか亭」っと・・・
その時は「なんとか」の部分は覚えていた。
すると、「なんとか亭」があった。あ~これだこれだと、住所としっかりと見て曲がる十字路も覚えた。

さらに次の日、どうしてもその店に入りたく19時半には会社を出た。
きちんと調べた十字路を曲がるとそこにはキラキラと光る電飾に「なんとか亭」と書かれた看板。
あった!と自転車を店の前に止めて店に入る。

店には先客はおらず俺だけみたいだった。
店主らしき女性が俺をテーブルまで案内する、メニューを見せてもらう。
色々な種類のコーヒーと手作りピザがオススメのようだ。
俺は本日のおすすめコーヒーと手作りピザを頼み、携帯をいじりながら料理が来るのを待つ。

するとジリリリリリリリ!!!という目覚まし時計の音のようなものが聞こえた。
それと同時に店の奥、おそらくトイレがある方から他の客が出てきて、テーブルに座る。

なんだなんだと思いながら周りを見渡すと、6,7つくらいあるテーブルには客が座っている。
さっきまで座って無かったような気がしたのに、おかしいと思って一人の客を見ると、その客の顔が黒いのだ。

黒いというのはのっぺらぼうの黒い版というのではなくて、何か穴が空いていてその奥がくらい空間のようなそんな感じ。
恐る恐る他の客の顔を見ると、みんな黒い。そしてみんな笑っているような気がしたんだ。

コーヒーが他の客に運ばれてきた。
コーヒーカップを手に持ち、顔に近づけると湯気が客の黒い顔に吸い込まれていき、顔の前でぐるぐると回り黒い顔がだんだんと普通の顔に戻ってくる
そんな状況を見た。

俺はなんだか怖くなり、店を出ようかと考えたが、注文をして料理も食べないでお金も払わないで出て行くのは失礼だと思った。
いや、こんな状況だがその場になるとそう思ってしまうのは日本人だからなのか・・・
とにかく料理が来るのを待って、すぐに帰ろうと思った。
しばらくすると、コーヒーとピザが運ばれてきた。

その女店主の顔は普通の笑顔だったが、凄く不気味に見えた。
コーヒーを飲みほして帰ろうと思い、コーヒーカップを口に近づけた瞬間、黒いコーヒーに浮かぶ俺の顔がとんでもなく不気味に俺に笑いかけた、声も聞こえる。
「へへへええへへへえええへへへへえええ!」という声がコーヒーの黒い俺から聞こえる。

その後、コーヒーに浮かぶ俺の顔がさっきの客のように黒く穴のあいた感じになった。
そして、黒い湯気が俺の顔にまとわりつき、笑い声がさらに大きくなる「うへへへへへえええへへへ」俺はコーヒーカップをテーブルに置き、顔をオシボリで吹くとすぐに席を立った。

すると、他のテーブルにいる客が俺の方を一斉に向いて、「へっへえへええへへへへええ」と笑っている。
黒い顔でだ。
俺は財布の中に入っていた1000円札を2、3枚レジに置き、逃げるように店を出た。

急いで家に帰り、鏡を見ると顎の左下あたりに黒いほくろの塊のようなものが出来ていた。
大体直径5cmくらいの丸いアザだ。

次の日も、その次の日も俺はいつものようにその道をまた通って、十字路にさしかかると左を見るのだが、そこにはあの「なんとか亭」は無い。 
食べログでもう一度調べてみるが「なんとか」の部分がわからなくて調べられないでいる。

もし思いだして、もう一度調べて20時頃にあの十字路の左側に行くと、きっと「なんとか亭」はあるんだろうなぁと思いながら、毎日あの道を通っていた。

その後、東京に転勤になり自転車通勤ではなく電車通勤となって、黒い丸いアザは病院で見てもらった結果、あまり良くないほくろだということでレーザーで治療してもらった。

あの「なんとか亭」は実在したんだろうか・・・それとも俺の頭がおかしかったんだろうかと今でも、不思議に思っている。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?302

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コメント

  1. S より:

    弱めの神や怪異が、人間界で活動するための小金稼ぎに…。