年々変わる写真

エレキコミックのやついいちろうが稲川淳二の夏のツアー終了後の楽屋で稲川から聞いた話。

「年々変わる写真」てのがある。海を写した写真なんだけどそこに後ろ向きの女が写ってて、それが段々こっちを向いているというもの。
たいがいの心霊写真には平気な稲川もその写真だけは手元に置いていたくなくて、ディレクターや監督も持って帰りたくなかった。

そこで、その写真を置いておく為だけに、一軒家を借りていた。その家から、毎年ツアーの季節になると助監督がその写真を取りに行く。
ところが毎年、その取りに行くときに妙なことが起こるらしい。

写真は一軒家の階段を上がった二階正面の棚にしまってあるんだが、二階に上がると、後ろから階段を上がってくる音が聞こえる。
ギシ、ギシ、ギシ、ギシ、ギシ、ギシ。振り返るが、誰もいない。
そんなことが毎年ある。

ある年、助監督が「稲川さん、もう怖いんで、一緒に取りに行ってください」と頼んだ。
稲川はそれに応じ、二人で件の家に行った。

二階に上がると、確かに階段を上がる音が聞こえる。
ギシ、ギシ、ギシ、ギシ、ギシ、ギシ。
「あれ?」と稲川は思った。階段を上までは上ってこない。
途中で止まっている。

稲川は一度一階に降り、音のした回数だけ階段を上がった。
そして前を見ると、ちょうど、その写真がしまってある棚が正面に見えた。

「だから、」稲川は言った。
「毎年、見に来てるんですねえ」

ちなみにこの年の稲川のツアーではいわゆる「怖い話」はほとんどなく、「何回も来るコアなファンが怖い」、「心霊写真についでに写ってる女が男みたいな顔で怖い」 「最近の運転マナーが怖い」、挙句の果てに「戦争が怖い」とめちゃくちゃだったらしい。

上に書いた話を聞いてやついが一言

「その話をしろ!稲川!」

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?276

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