蛙と蛇

アメリカ人留学生から聞いた話。

彼の実家は、有名な大きい湖の近くにあるという。
黒い山に囲まれた小さな町なのだそうだ。
彼はそこで生まれ育ったのだが、子供の頃に不思議な物を見たらしい。

夕暮れ、幼い彼が家路を急いでいると、後ろから声をかけられた。
振り返ると奇妙な男が立っていた。
身体は普通の人間だったが、驚くことにその頭部はまるで蛙そっくりだった。
蛙男は湖までの道行きを尋ねてきた。
彼がおっかなびっくり教えると、丁寧に礼を言ってから歩き去ったのだという。

数日後、夕暮れにやはり同じ場所で、彼は再び呼び止められた。
振り返ってから彼は硬直したらしい。
今度の男は、蛇の頭部を持っていたのだ。

彼は蛇が苦手だった。
蛇男は「蛙に似た男を知らないか?」と、しゃがれた声で聞いてきた。
彼は思わず、蛙男が湖に向かったことを告げてしまう。
蛇男は軽く会釈をし、足早に暮れなずむ道の彼方へ消えていった。

思い出すと今でも、夢を見ていたのかなと思うのだそうだ。
それでも彼は、蛙男の小父さんが無事に逃げ切れたことを祈っているという。

山にまつわる怖い話6

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