同僚の話。
彼の住んでいる町の山には、今はもう廃止された単線の鉄道がある。
途中に手掘りのトンネルがあり、何かが出ると噂されていた。
学生の頃、そこへ仲間たちと肝試しに行ったのだそうだ。
懐中電灯を手に真っ暗なトンネルの中に入っていったという。
トンネルの中ほどで、いきなり線路が振動し始めた。
すぐさま眩しいライトと警笛の音が響き、線路の上を列車が突進してきた。
慌てて外に飛び出すと、音も光も振動もかき消すように消えてしまう。
あたりには虫の声しか聞こえなかったという。
彼には見えなかったのだが、仲間の一人が運転手の顔を見ていた。
ひどく驚いて目を見開いた表情をしていたらしい。
「ひょっとしてあの電車、時間を迷ったのかな」と彼は言う。
「何をどう迷ったんだ?」と聞くと、彼は「さぁ?」と肩をすくめていた。
山にまつわる怖い話7