友人の話。
仲間二人で山歩きをしている時に、いきなりの豪雨に見まわれた。
日が落ちても野営に適した場所が見つけられず、へとへとになっていた。
やがて道の脇に小さなお堂を見つけ、軒の下にもぐり込んだという。
雨合羽を脱ぐと、軒下でそのまま眠ってしまったそうだ。
翌朝、目を覚ますと雨は既に上がっていた。
一つ伸びをしてあたりを見回すと、昨夜は気がつかなかったものに気がついた。
お堂の扉一面に、白地に赤で書かれた古いお札がびっしりと貼られていた。
扉に近づくと、中から何か音が聞こえた。
コツコツという音がこちらに近づいてくる。
扉がぐっと開きかけた。
お札を破ることができないのか、扉は開かず、お堂の中もまた静かになった。
彼は眠り込んでいる仲間をたたき起こして、そこを発ったそうだ。
山にまつわる怖い話8