白い人影

知り合いの話。

彼はガードレールなど道路施設の整備を生業としている。
峠道で車が谷に落ちた事故があり、その復旧作業をしていた時のこと。

その峠は交通事故が多いことで有名だった。
破れたガードレールを撤去していた彼は、何の気なしにふと下を覗き込んだ。

下は鬱蒼とした森になっていたが、そのここかしこから彼を見上げている白い人影があったという。
はるか下のはずなのに、なぜか一人一人顔の表情まではっきりと見えた。

仲間の大声で我に返る。
彼はふらふらと谷に向かって足を進めていたそうだ。
ぞっとして、それ以降下を覗き込むのは止めたという。

多分、この峠の事故は減らないだろうな。
彼はそう思っているのだそうだ。

山にまつわる怖い話8

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