百獣の行列

私の体験した話。

山村のお客さんを訪問する途中でのこと。

田中の舗装もされていない道を走っていた私は、路上に動く物を認め車を停めた。
池と池とに挟まれた部分を、のそのそと石亀が歩いていたのだ。

どうやら、大きな池から小さな池へと移動しているらしい。
私は、亀が渡り終えるのを待つことにし、一息つくことにした。

亀が池に消え、車を出そうとしたその時、新しい横断者が姿を現した。
太い青大将だった。
なぜか、まるで道を渡る順番を行儀良く待っていたかのような、そんな気がした。
見守っていると、青大将に続いて今度は大きなヒキガエルが現れた。

その後も沢蟹、水鳥、蝮、牛蛙、鼬などが一匹ずつ、しかし切れ目なく移動を続けた。
私は呆然として、百獣の行列に見入っていたようだ。

呆けていると、いきなり名前が呼ばれた。
振り向くと、訪問先のお爺さんがトラクターに乗って、車の後ろに付けている。
挨拶を交わし、私は目の前の行列を指差した。
「これは何事でしょうね?」と私が口にすると、お爺さんにこう返された。

「あぁ、今あっちの池には大物が来ているからのぅ」

平然とした顔でお爺さんは言う。
大物とは何かと尋ねたが「大物ってのは大物のことだ」とはぐらかされた。
それ以上のことを聞く雰囲気もなくなり、二人その場でじっと待つことにした。
しばらくして行列は終わり、お祖父さんと共に家に到着した。
商談打ち合わせは無事に終わったが、大物についての話題は出なかった。

それから何度も同じ場所を通ったが、あれ以降は行列を見ていない。
今では、道路もきれいに舗装され、池の護岸工事も行われている。
大物とやらは、もう来なくなったのだろうか。

山にまつわる怖い話9

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