黄色い雲

知り合いの話。

山中で高速道路の工事をしていた時のこと。

昼時、車にこもって弁当を食べていると、目の前を不思議な物が横切った。
黄色い雲。杉花粉か何かの塊のように見えた。
まるで意思を持っているかのように、不自然な軌道で空中を流れていく。

やがて雲は一台のダンプに取り付き、開いたままの窓からあっという間に中に吸い込まれていった。
慌ててその車に走り寄り無事を確認しようとしたが、ダンプ車内からは「どうかしたのか?」という声が返ってくる。
どうやらダンプの方からは、黄色い雲などまったく見えなかったらしい。
その場は結局、彼の見間違いだろうということになったという。

しかし、次の日から件のダンプ運転手は仕事を休んでしまった。
様々な激しいアレルギー反応が現れて、動くこともままならない状態になっていたと聞かされた。

「あの人は、切っちゃいけない木を切ったからのぅ」

年配の作業員がそう言っていたのが気になったが、どういうことなのか聞くこともなく、その現場は終了してしまったそうだ。

山にまつわる怖い話15

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