知り合いの話。
彼の親戚に猟好きな叔父さんがいるそうだ。
昔、地元で禁忌とされていた山に踏み込んだことがあるのだという。
その山の物は全て、そこら一体の山神様の物ということになっていた。
当時、叔父さんはまだ若く、禁忌何するものぞ!という思いもあったのだろう。
山に入ってすぐに、連れていた猟犬が興奮して走り出す。
名前を叫んで大慌てで追いかけたが、なかなか追いつけない。
姿を見失って間もなく、暗い森の奥から犬の悲鳴が聞こえた。
思わず銃を構え直して先に進むうち、目の前に異様な物が現れた。
臓物を貼り付けまくったような、大きく柔らかそうなピンクと黒の斑な袋。
仄かに湯気を上げ、時折痙攣する。生きている。
恐る恐る近づくと、覚えのあるクンクンという鼻声が、肉袋の中より聞こえた。
その時初めて、これが愛犬の成れの果てであることに気がついた。
詳しくは不明だが、犬は裏表がひっくり返されていたらしい。
そうする内にも声は小さくなり、痙攣も小さくなっていく。
声と動きが完全に停止してしまってから、叔父さんは泣きながらその亡骸を抱えて麓の車まで戻ったのだそうだ。
今でも叔父さんは猟を止めていないが、その山にはもう足を踏み入れないという。
山にまつわる怖い話17