友人の話。
彼女の実家は山奥深い村だ。
今は廃村となってしまったが、そこで奇妙な物を幾度となく見たという。
黄昏時によく、民家の屋根の上で踊り狂う黒い影があった。
上から下まで真っ黒で、細長い手足をくねるように振り回していた。
人型ではあったが、不気味なことになぜか頭が見当たらない。
初めは見えて当たり前な物だと信じていたが、友達にはその影が見えないと知り、人前では口にしなくなった。
詳しく調べた訳ではないが、黒影が踊っていた家では、その直後に不幸が訪れていたらしい。
知り合いのお婆さんに「厄災がそういう形で見えるんだね」と言われた。
村を出てからは、そういった影は見えなくなったのだそうだ。
山にまつわる怖い話17