友人の話。
母親に頼まれて、庭に水やりをすることになった。
ホースは何処にあるかと聞けば、縁側の下に投げてあるという。
覗き込むと、水色の細長いホースが二つ、束ねられてとぐろを巻いていた。
手前の方でいいや、と手で引っ張り出そうとしたその時。
つかんだホースは、まるで生きているみたいに激しく身を捩った。
「うわわわわっ!」悲鳴を上げて、腕に巻きつくホースを払い落とす。
落ちたホースは信じられない速さで地を這い、あっという間に姿を消した。
しばらく呆然として、ホースが逃げ込んだ藪を見つめていたそうだ。
「家にホースは一つしかないよ。あんた、蛇でもつかんだんじゃないの?」
母親はそう言って済ませたが、彼はいまだに納得がいっていない。
「あれほど長い水色の蛇なんて日本にいるのかね?」
後刻、帰宅した父親が言うには、
「昔は色々と奇妙な物が山から下りてきていたもんだ。お前が見たのも、案外その手の類いだったかもな」
ということだそうだ。
山にまつわる怖い話21