囁く声 2019/12/19 雷鳥一号 先輩の話。 一人で岩登りをしていた時のこと。 切り立った岩壁に張り付いていると、後ろから囁く声がした。 ねぇねぇ ねぇねぇ 身を竦めた視界の隅に何かが映る。 いつの間にか、自分の背後で何か黒い影が踊っていた。 絶対に振り返らぬと決め、必死でその壁を登り切る。 その間ずっと、背後から楽しそうに誘う声が続いていたという。 多分、振り向いたら落ちてたと思う。直感だ。根拠はないけどね。 一人の時はとにかく気をつけろと、先輩は最後に付け加えてくれた。 山にまつわる怖い話23