見えない綱

同僚の話。

山里で道路工事をしていた時のこと。

ギャアギャアとけたたましい鳴き声が聞こえた。
烏だ。夕暮れの茜空の中、黒い影が必死に羽ばたいている。
何を騒いでいるんだろうと見ているうち、おかしなことに気がついた。

烏は何かから逃げるように力一杯羽を振っている。
しかし、その身は少しも前進していないのだ。
まるで見えない綱に引っ張られているかのように。

やがて力尽きたのか、烏は羽ばたきながら竹薮の中に引き込まれていった。
ふっつりと鳴き声も聞こえなくなり、それきり辺りは静かになる。

仕事が終わってから、その竹薮に足を運んでみた。
黒い羽根が少し散らばっていたが、他には何も見えなかったという。

山にまつわる怖い話23

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