蛇殺し

Kさんの話

Kさんの祖父は近所でも有名な嫌われ者だった。
K家は地元の名家で、傲慢な性格も嫌われる原因ではあったが、何よりの理由は彼の悪癖にあった。
彼は地元では”蛇殺し”と呼ばれ、蛇を殺しまくっていた。

幾つもある持ち山を毎日、順繰りに渡り歩き、植木の剪定に使う大きな裁ち鋏で、ブツンブツンとメッタ斬りにしていたというから穏やかな話ではない。
K家の山には蛇がいないというのが地元の語り草で、いつか祟りにあうと噂されていた。
しかし、K祖父は90歳近くまで病気知らずで、眠るように安らかに息を引き取った。

代替わりしたK父は温厚な性格で、集落の人々からの信望も厚かった。
しかし、高校生の息子が新しい噂のタネとなり、またも集落を騒がすようになった。祖父と同じく蛇を殺しに山を回るようになったのだ。

『息子…?』
『俺だよ』
『え…』
『口の悪い奴はキ○ガイの隔世遺伝なんて言うけどな…』

祖父の死後、毎日、眠るKさんの周りを蛇が這い回るようになったという。
最初は幻覚だと思い、気でも違ったかとも思ったそうだが、蛇は日毎に増え、噛まれた歯型も残ったという。

『殺した数だけ減るんだ。爺さんも悩んでたのかな』

生前は嫌いだった偏屈者の祖父が、誰にも打ち明けることもなく苦しんでいたかと思うと不憫に感じたという。

『お父さんは?』
『親父は婿養子だからか平気だったようだ』
『今も殺してるんですか…?』
『今じゃ俺が”蛇殺し”って呼ばれてるよ』

Kさんの唯一の救いは子供がいないことだそうだ。
自分にかかった因縁を諦めながらも、原因くらいは知りたいと思い、情報を集めているという。
だから色んな人から怖い話を聞き漁っている俺にも話してくれたのだろう。
何か情報が入り次第、連絡を取り合おうと約束をして話は終わった。

山にまつわる怖い話31

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