先輩の話。
山行中に雨に降られ、大きな木の下で雨宿りすることにした。
先客が一人居り、身体を拭きながら四方山話をしていたのだという。
と、背後よりいきなり声がかけられた。
「儂も雨宿りさせてくれんかの」
どうぞと振り向いた彼の前に、とんでもなく大きな顔が突き出された。
彼の背丈よりまだ大きい、皺だらけの老婆の顔。
それだけが暗い雨の中、でんと地面の上にそびえている。
うひゃぁ!と奇声を上げたると、大顔は驚いたような表情をして消えた。
「今の見た?何アレ!?」と先客に問いかけたのだが。
「・・・君、今誰と話してた?」そう逆に問い返された。
思いっ切り訝しげな表情をしている。
その後の会話は、まったく弾まなかったそうだ。
山にまつわる怖い話25