存在しない漢字

京都の大学に入学して1年目の話。

5階建てのマンションで1人暮らしを始めた。
同じマンションの別の階には俺の友人が住んでいた。

2人とも1人暮らしなんか初めてだし、まだ他に友人もいなかったから、ことあるごとに互いの部屋に遊びに行ってた。
俺の部屋は風通しが悪く、夏なんかは盆地特有の蒸し暑さでたまらん。
そこで、少しでも風通しがよくなるように、玄関のドアをいつも数センチ開けてた。

ただそれだとちょっと不用心だから、施錠はせずに、U字型の二重ロックだけをひっかけて、その上で、扉と地面との間に新聞紙かませて、数センチ隙間を作ってた。
そんで寝る時は、かませてた新聞紙を抜いて、U字ロックだけをひっかけてた。
これだと、たとえ家の外からドアを引いたとしても、数センチの隙間が開くだけだから、だれも侵入できないだろうと思って。

ところが、友人は夜中でも構わず遊びに来るんだ。
そいつはドアに鍵が掛かっていないと思ってるから、勢いよくドアを引く。
するとU字ロックがひっかかって、「ドゴン!」って結構大きな音がするんよ。
それで目が覚めて、眠い目をこすりながら友人を部屋に入れることが何度かあった。

ある夜、バイトでクタクタに疲れた俺は、帰って来るなりそのまま蒲団に入り、あっという間に眠りに入った。
眠りの深いところにいる時に、突然、例の「ドゴン!」で目が覚めた。

さすがにその日はものすごく眠たくて、友人には悪いがドアを開けず、そのまま寝ることにした。
その後、5回くらい「ドゴン!ドゴン!ドゴン!」と鳴ったんだが、俺は寝ぼけながら「悪い…。今日はもう諦めて部屋に帰って…」と思いながらそのまま再び眠りに落ちた。

翌朝、部屋を出て、友人を訪ねた。
昨日のことを話しても、「昨日は行ってないよ」って言う。
脅かすなよ、と食い下がるが、どうも嘘は言っていない様子だった。

じゃあ、あれは夢だったのかもな-、とか言いながら、二人で俺の部屋のドアまで来た時、友人が何かに気がついて声をあげた。
その声に驚いた俺が、友人の視線を追うと、俺の部屋のドアにうっすらとたくさんの文字が書かれていたんだ。

数えてみると縦13文字×横9文字。
きれいに表のように並べて書いてある。

しかもその文字のどれもが、おそらく実際には存在しない漢字(?)なんだよ。
異様に画数が多く、部分部分は見たことがあるんだが、全体としては存在しない文字。

気持ち悪くて二人でびびりまくった。
すぐに消そうと、雑巾を部屋の中に取りに行こうとしたんだが…。

その朝、俺は鍵を掛けずに友人の部屋に行ったんだ。
だから、さっきの十数分の間に誰かが部屋の中に入ってじっと俺を待ってるんじゃないかと思うと、もうダメでさ。
あわてて2人でマンションから走って逃げたよ。

結局、他にも知り合いに来て貰って、真っ昼間に思い切って入ったんだけどな。
心配していたようなことは何もなく、それだけはよかったと思ってる。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?218

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