赤い雨

知り合いの話。

実家の山村に帰っていた時のこと。
従兄弟と一緒に山に入っていると、俄か雨に降られた。
雨に打たれているうち、何となく違和感を覚えた。

おや? この雨って妙に粘々しているような気がする。

気になった彼は、手で器を作り雨を受けてみた。
掌に溜まった液体は、確かに少し粘り気がある。
そして僅かに赤がかって見えた。
見ていた従兄弟が「あまり触らない方が良いかも」と伝えてくる。

地元では赤い雨と呼ばれているのだという。
瓶とかに溜めてしばらく経つと、色も消え粘りも無くなり、普通の水になっているのだそうだ。
直接の害はないみたいだが、気味が悪いので出来るだけ触れないようにしているらしい。

「ただね」 従兄弟は続けた。

「この雨が降った翌日って、村から犬が一匹消えるんだ。探しても探しても、見つかった例がないってさ」

犬を繋いだり、座敷の中に入れたりしないの?
そう聞くと従兄弟は仏頂面で答えた。

「犬以外のものが居なくなりだしたら、どうするのさ」

そこで雨の話題は打ち切りとなった。
今でもあの山の中で、赤い雨が降っているのかどうかは不明である。

山にまつわる怖い話25

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