『バカヤロー』と『ふざけるな』

週刊文春連載  室井 滋の「すっぴん魂」より

その日はドラマの撮影をしていた。
共演者の男性が「ふざけるな」という台詞を言った時、役者の台詞と台本をチェックしていたスタッフが待ったをかけた。

「○○さん!そこは『バカヤロー!』ではなく『ふざけるな』ですよ」
台詞を言った俳優は慌てて否定した。
「私はバカヤローなんて言ってませんよ!」
室井滋にも、ちゃんと「ふざけるな」と聞こえた。しかしスタッフは引き下がらない。
「いいえ、バカヤローとおっしゃいましたよ」

そんな馬鹿なと室井は思ったが、スタッフもプロだ。
「バカヤロー」と「ふざけるな」は一文字も合っておらず、聞き間違えるはずがないのだ。
そのうち監督が何事だと近寄ってくる。
全員にわけを話すと、驚いたことに撮影現場は「ふざけるな」派と「バカヤロー」派に二分される。

結局、話をしていても埒があかないのでモニターで問題箇所を見てみましょう、という事になった。
全員がモニターの前に集まり、再生されたシーンを食い入るように見つめる。
すると、やはり「ふざけるな」派と「バカヤロー」派に分かれるのだった。

現場は混乱した。これでは撮影にならない。しかし、監督が台本どおり「ふざけるな」と聞こえたと言うので、撮り直しはしなかった。

だが、それからも現場は混乱続きだった。
室井自身も「脚」と言ったはずが他の人には「腕」と聞こえたり、聞き違いが幾度と続いた。
そうするうちに、いつの間にかスタッフにも耐性がついてきて、聞き違いがあってもそのまま撮影を進めるようになった。

これがスタジオという場所と関係あるのかは分からない。
果たして、後日放送されるドラマは、視聴者にはどんな台詞で聞こえるのだろうか…。

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わりと最近に載っていたエピソードです。
2時間ドラマらしいのですが、観た方いらっしゃるでしょうか?
凄く気になってたんだけどドラマの題名が無かったしなぁ。

ちなみに台詞は「バカヤロー」「ふざけるな」だったと思うのですが、どっちが正しい台詞だったかは全く覚えておりません(´・ω・`)

ほんのりと怖い話13

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