友人の話。
彼女の実家は山奥深い村だ。
今は廃村となってしまったが、そこで奇妙な物を幾度となく見たという。
大きな家や寺に出向いた時には、襖をちゃんと閉めるようにきつく言われていた。
襖や障子をうっかり開けたままにしておくと、何者かが閉めに来るから。
ピシャッ!、と背後で大きな音がして驚かされるのだそうだ。
戸をピシャリと閉めることからか、それはトッピッシャンと呼ばれていた。
これに出くわすと、風邪を引いたりして具合が悪くなるとも聞いた。
彼女も一度、トッピッシャンに遭遇したことがある。
音にも驚かされたが、同時に身震いするくらい体中が寒くなったらしい。
慌てて襖を引き開けてみると、廊下には誰も見えない。
ただ廊下の空気も、まるで真冬のように冷え切っていた。
ひどく気味が悪い思いをしたせいか、以後はきちんと戸を閉めるようになったのだという。
山にまつわる怖い話26