福島にて

私の実家はものすんごい田舎にあります。
ほんと何にもないから、日用品を買うために山越えしなきゃならないほど。

その日は暗くなってから買い物に出かけました。
母が車を運転し、私と妹が乗りこみました。
スーパー二軒とドラッグストアと文房具屋を回る普段通りのルートの予定。
文房具屋には1枚30円くらいで買える綺麗な折り紙が置いてあったので、私はそれが目当てで買い物についていったのです。

スーパー・ドラッグストアで食品・日用品を買いこんで、次はやっと目当ての文房具屋。
近くの駐車場に着くと私だけ車から降りて、文房具屋に向かいました。
張り紙がしてあって臨時休業でした。
仕方がないので車でもう一軒の文房具屋に寄ってくれるよう頼むと、母は無言で車をだしました。

道中、心なしかスピードが出ている気がして、ああ何軒も寄らせて母は怒っているのかなあと思って私はショボン。
ずっと黙ってました。
そして目的の店につくと私だけ降り、折り紙を買ってすぐ戻りました。

車に乗り込みドアを閉めた瞬間、なぜか母は車を急に発進。
大通りを猛スピードでまっすぐ走って十字路にぶつかると反対車線に車はパラパラ走っているところに、無理やり入りこみUターンをしました。
半ばパニックになっていたその時、ドーンという衝撃音が。

振り返ると十字路で車同士の衝突事故が起きていました。
それでも母は車を止めようとしません。
やっと家に着いた時はげんなりでした。
母は青い顔をして「お腹が痛くなっちゃったのよ、ごめんね」と言い、すぐ寝てしまいました。

その後私はこのことを忘れてしまいましたが、二年後妹の口から真相を聞くこととなりました。

その日は妹はドライブのつもりで買い物について来ていたので、買い物中もずっと車の中にいて、車内灯でマンガを読んでいました。
そんなことを二回繰り返すと、妙なことに気がついたそうです。

さっきからずっと同じような車が近くにとまっている。
よく見ていたら、40くらいの男が降りてきて、母と私の後に続いてドラッグストアに入っていった。
二人が帰ってくるときにも、ちょうど後ろからついてくるように出てきた。
手には何も持っていない。

文房具屋で私だけが降りた時、母に妹はそのことを告げたそうです。
しかし、車だから大丈夫と母は取り合わず、私にはそのことは言うなと口止めしたそうです。
そして二軒目の文房具屋ここでも私だけが降りました。
またその男は続いて車を降り、同じように文房具屋に向かったそうです。

「あの男だよ!まなみ姉ちゃんが危ないよ!」妹がそう言うと「まなみが乗ったらすぐ車をだすから、準備していなさい」
母はエンジンをかけながら真っ青な顔でそう言ったそうです。

私が帰ってくると案の定後ろにはその男が。
車のライトに照らされた時、そいつは手にカッターを持っていたそうです。

二人は絶句。
私が乗り込んだ瞬間すぐ車をだしました。
妹はその男を見ていたらしいですが、
そいつも車に乗り込んで追ってきたらしいです。
しかし、急なUターンについて来れず、十字路で対向車と事故を起こしました。
薄いブルーのルミーナだったと妹は言いました。

今私は大学生です。
母と妹に感謝。
ちなみに母は運動神経ゼロです。
いつものろのろ運転の母がよくあんなことができたなあと、妹は苦笑いしながら言っていました。
ほんと母は強しです。

ほんのりと怖い話16

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