ほんのりのほの字の程度な友人Aの話
Aは子供の頃の夏休み、毎年田舎に帰っていた。
その田舎の家は農家の家でただっ広く、トトロに出てくる婆ちゃんの家みたいな造りだった。
Aと弟は田舎に帰ると毎日家で隠れんぼしたり、虫取りしたりして飽きることなく過ごしていたそうな。
ある日、いつものように二人はただっ広い家の中で隠れんぼをしていた時のこと。
Aは鬼で隠れた弟を探していた。
なかなか見つからず、10分は探していたらしい。
弟は怖がりですぐに見つかるのだが、今回はめぼしい場所にはどこにもいない。
Aは駄目元で押し入れを探すことにした。
すると、暗い所が大嫌いな筈の弟が押し入れの中にうずくまっていた。
「見つけた、早よ出てきい」
ところが弟は押し入れから動かず、出てこようとしない。
Aは早く鬼を交代したい一心で弟の手を引っ張った。
だが弟はそれでもその場から動かず、逆にAの腕を引っ張りはじめたのだ。
Aがいい加減にしろと叱りかけた瞬間
「お姉ちゃん、どうしたん?」
背後から弟の声。
振り向くと今にも泣き出しそうな弟が立っていた。
えっ、とAが思った瞬間、押し入れの中の誰かは、パッ と手を離した。
覗きこんでも誰もいなかったそうだ。
弟は、Aがあまりにも遅いので、心配になって探しにきた、との話だった。
だが二人はそれに懲りず、しばらく隠れんぼはやめられなかったそうだ。
ほんのりと怖い話19