父からの電話

私の父が死んだときの話

父は私が中学生ぐらいから、女、ギャンブル、酒、暴力に狂って、隠し子までいた。
そんなこんなで親は離婚して、愛人と暮らしていたらしい。

それでも私は小学生のころの記憶(父とキャッチボールしたり、楽しかった日々、仲のよかった両親)もあり、父とは連絡を取り合ったりして、父のことは大好きだった。

しかし俗にいうアル中状態、愛人と隠し子との暮らしも長くは続かなかったらしく、一人で暮らしていた。
そのころ私は大学を卒業後地元から離れて暮らしていた。

もう精神的におかしかったのだろうか、それとも寂しかったのだろうか、朝昼夜問わず、電話をかけてきた。仕事中であろうとも電話に出るまで鳴り続ける電話にうんざりしながら、『もういい加減にしてくれ!!』と伝えたがそれでも鳴る電話。

ほかの知り合いにもかけているようで、周りは迷惑しているようだった。

そして今年の2月父は死んだ。
そのとき通夜で親類全員の携帯電話、家の電話すべてが鳴った。
着信履歴は全員父からのようだ。
パニックになりながら、電話に出たものの、相手は何も言わない。
全員パニックになりながら

『もしもし』
『もしもし』

これを繰り返しているが、反応はなにもない。
父の母(ばあちゃん)が

『○○あなたはもう死んだの、私ももう年だしもう何年もしないうちにそっちに逝くから寂しがらなくていいのよ』

といった瞬間、ほかの電話は切れたようだった。
私の電話は最後に
『幸せになれよ』
と言って切れた。大好きだった父の声に涙が出た。
ほんとは一緒に酒飲んだり、一緒にドライブいったりしたかった。
なんでこんなことになったのか、幸せな家族だったのに、どこで間違ったのか。

そんなことを思いながら、今も父の電話番号は俺の携帯の中にある。

不可解な体験、謎な話~enigma~ 48

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