ぎゅうぎゅう詰めの車

俺、結構オカルト系は昔から大好きだったんだけど、小さい頃から全然不思議な体験や幽霊らしきものを見たことはなかった。だから、大きくなるにつれて「やっぱ幽霊とかって存在しないんだなあ。」なんて懐疑的になっていた。
そんな俺がもう30過ぎてから、4、5年前に体験した話。

ある秋の日、俺は昼過ぎから外回りの仕事があって、現場を出て最終的に仕事場へ向かったのは日が暮れかけた頃だった。
ちょうど車の後ろから秋の夕日が差していて、前方に長く影が伸びていた。
道は田舎の農道みたいな、車2台が通れるくらいの狭い道。でも、この地域はこの道しかないんで結構車の通りは多い。

途中で、脇道から俺の前に車が入った。軽のワゴン車両で、確か濃い緑色だったと思う。
ちょっと通勤ラッシュにかかる時間帯なので、道は込んでいて、俺は前の車にぴったりとくっつく形になった。

前の車を見ると、結構なおっちゃんらがぎゅうぎゅう詰めで乗っている。
俺は「あんな小さい車にあんなに乗らなくても・・・」なんて思っていた。
車の流れは案の定、ちょっと行くとノロノロ運転になり、渋滞となった。

俺はハンドルに両手を乗せて、覆いかぶさった形で前の車を何気なく見た。

すると!!車の底から、腕が生えてる!!まさにニョキっという感じ!俺は
「え?え?見間違い?」
と思い、身を乗り出して覗き込む。車は渋滞してるんで、かなり近づいても事故の心配はない。でも、どう見ても、腕。

しかも、走り出すとぶらーんという感じで、なんかこう、糸かなんかで吊り上げられているかのようにぶらぶらとする。
車が止まると、「はあ、疲れた。」みたいな感じで道路にポトっと腕を置く。
俺は、何回も目を凝らしてみた。確かに腕。走るとぶらぶら。止まると、ポト。

しばらく行くと、緩やかな右カーブで横断歩道に差し掛かる。
「ここならちょうど後ろから夕日が差してるし、白い横断歩道で光が反射して車の下がよーく見えるんじゃねえか?」
と思って、更に凝視。でも、腕・・・・・・。

そんなこんなで約15分ほど、じっくり観察しました。途中でその車は右折し、俺はその腕を見送りながら直進して別れました。

仕事場に帰ってから「すげえもんみた!すげえもんみた!」と言っても誰も信用してくれない。残念。

で、後日談。

その車、実はタコ部屋から出てきた車で(だからあんなに乗ってたのね・・)、そのタコ部屋に住んで強制労働させられていた人の中で、会社内のトラブルで殺された人がいたことが発覚。生き埋めだったらしい・・・。

事件自体があったのは、腕を見た2~3年前。俺が腕を見た翌週(?)くらいに事件は発覚。同僚に「俺この前腕見たって言ったじゃん!?あれだよ!あの会社!すげえ人いっぱい乗ってたもん!」って言ったら同僚もようやっと納得。
亡くなった方がずーっと車に憑いていたんでしょうか。なんにしても、あんな不思議なものを見たのは初めてでした。

不可解な体験、謎な話~enigma~ 49

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